リーダーの信用は一貫性で決まる|言行一致が大切な理由

「昨日はAを優先しろと言っていたのに、今日はBを先に進めろと言われた」

このようにリーダーの発言がコロコロ変わると、社員は何を信じて行動すればよいのかわからなくなってしまいます。

リーダーが信用されるために大切なのは、言葉と行動に一貫性を持つことです。ただし、一貫性とは、一度決めたことを絶対に変えないという意味ではありません。

本記事では、リーダーの信用をつくる一貫性の重要性や、言行一致を実現するために意識したいことを解説します。

目次

言うことがコロコロ変わるリーダーは、なぜ信用されにくいのか

「昨日はAを優先しろと言っていたのに、今日はBを先に進めろと言われた」
「先週の会議で決まった方針が、社長の一言で変わってしまった」

このようなことが繰り返されると、社員はリーダーの言葉を信用できなくなります。指示に従って仕事を進めても、翌日には別の指示が出るかもしれないからです。

やがて社員は、何が会社にとって重要なのかを考えるよりも、社長の機嫌やその日の発言を気にするようになります。提案をしても方針が変わるかもしれないと考え、自発的に行動する意欲も薄れていくでしょう。

もちろん、経営者が判断を変えること自体は悪いことではありません。市場環境や顧客のニーズが変われば、経営方針を見直す必要があります。

問題は、判断が変わった理由を説明せず、以前の発言との矛盾を放置してしまうことです。

経営者にとっては合理的な方針変更でも、社員からすれば「社長の言うことはコロコロ変わる」と映るかもしれません。

リーダーの信用は、立派な経営理念を掲げるだけでは生まれません。日々の発言と行動が一致しているか、判断に筋が通っているかという、小さな積み重ねによって築かれるものです。

リーダーの信用をつくるのは「一貫性」である

リーダーが信用されるために大切なのは、一貫性を持つことです。

ここでいう一貫性とは、一度決めたことを絶対に変えないという意味ではなく、自分が発した言葉に責任を持ち、その言葉に沿って行動することです。

経営者は日々、多くの判断を下します。すべての判断が正しいとは限りませんし、状況によって考えが変わることもあるでしょう。

それでも、自分が何を大切にしているのか、なぜその判断をしたのかという軸がぶれなければ、周囲はその人の言葉を信用しやすくなります。

一貫性を持つリーダーになるために、まずは次の2つを意識してみてください。

できない約束をしない

「来月には待遇を改善する」
「今度、ゆっくり話を聞く」
「この企画は必ず実現させる」

経営者は社員を励ましたり、その場を収めたりするために、つい安易な約束をしてしまうことがあります。

しかし、実現できる見込みがない約束は、かえって信用を損なう原因になります。

経営者にとっては何気なく口にした言葉でも、社員は期待して待っているかもしれません。

特に待遇改善や人事に関する発言は、社員の生活や将来にも関わります。だからこそ、その場の勢いで約束するべきではないでしょう。

実現できるかわからないことは、正直に「現時点では約束できない」と伝える。それも経営者としての誠実さです。

信用されるリーダーは、できない約束で期待を集めるのではなく、守れる約束を一つずつ積み重ねていきます。

一度言ったことに責任を持つ

一度口にしたことは、できる限り実行する。それが言行一致の基本です。

例えば、「社員の意見を大切にする」と宣言したのであれば、実際に意見を聞く機会を設ける必要があります。「挑戦を歓迎する」と言いながら、失敗した社員を一方的に責めていては、言葉と行動が一致しているとはいえません。

社員は経営者の発言だけでなく、その後の行動も見ています。

だからこそ、経営者が何を言ったか以上に、言ったことをどう実行したかが重要なのです。

もちろん、事情が変わって約束を守れなくなることもあるでしょう。その場合は、何もなかったことにするのではなく、事情を説明することが大切です。

「以前はこう考えていたが、状況が変わったため判断を見直した」そう伝えることも、自分の言葉に責任を持つ行動の一つです。

「一貫性」と「考えを変えないこと」は違う

一貫性のあるリーダーと聞くと、一度決めたことを最後まで貫く人をイメージするかもしれません。

しかし、経営において、過去の判断に固執することが必ずしも正しいとは限りません。

大切なのは、結論を変えないことではなく、判断の根底にある価値観や姿勢に一貫性を持つことです。

経営判断は変わっていい

会社を経営していれば、予想外の出来事が起こることもあるでしょう。

市場環境の変化や取引先の事情、社員の成長などによって、以前の経営判断が最適ではなくなることもあります。

例えば、当初は事業拡大を目指していたものの、社員の働き方や自身の将来を考え、事業規模を縮小する方針に切り替えるケースもあるでしょう。

このような判断の変更は、必ずしも一貫性を失ったことにはなりません。

「会社と社員の将来を大切にする」という価値観が変わっていなければ、事業を拡大することも、規模を縮小することも、その価値観に基づいた選択になり得るからです。

むしろ、過去に決めたことだからという理由だけで方針を変えられないと、会社にとって必要な選択肢を見失う可能性もあります。

経営者に求められるのは、自分の判断を絶対視することではありません。

状況の変化を受け止め、必要であれば考えを改める柔軟さも必要にゃん。

変えるなら、昨日の自分に説明できるようにする

経営判断を変えるときに意識したいのが、「昨日の自分に説明できるか」という視点です。

以前はなぜその判断をしたのか。そして、今はなぜ違う判断をするのか――この2つを自分の言葉で説明できれば、結論が変わっても、そこには一貫した考え方があるはずです。

例えば、後継者への事業承継を検討していた経営者が、話し合いを重ねるなかで、会社の売却を選ぶこともあるでしょう。

この場合も、「会社を次の世代につなぎ、社員の働く場所を守りたい」という思いが変わっていなければ、手段が変わっただけとも考えられます。

重要なのは、判断が変わった事実を隠したり、以前の発言をなかったことにしたりしないことです。

そのうえで、社員や関係者にも方針変更の理由を説明することが、リーダーとしての信用につながります。

言葉と行動の矛盾は、思っている以上に見られている

経営者は、自分の発言が周囲にどのように受け止められているか、必ずしも把握できているとは限りません。

何気なく口にした言葉でも、社員にとっては会社の方針を示す重要なメッセージになることがあります。

そして、社員はその言葉が実際の行動と一致しているかを見ています。

経営者自身が忘れてしまった発言でも、社員の記憶には残っているかもしれません。

「言ったこと」より「やっていること」がメッセージになる

「社員を大切にする会社にしたい」と宣言していても、社員の相談に耳を傾けず、経営者の都合だけで物事を決めていれば、言葉は説得力を失ってしまいます。

「失敗を恐れず挑戦してほしい」と言いながら、失敗した社員を厳しく責めていては、社員も安心して新しいことに取り組めないでしょう。

また、「自分がいなくても回る会社をつくりたい」と話していても、実際には細かな判断まで経営者が抱え込んでいるケースもあります。

こうした言葉と行動の矛盾は、必ずしも本人の不誠実さから生まれるわけではありません。

長年の習慣や責任感から、無意識のうちに以前と同じ行動を取っていることもあるでしょう。

だからこそ、経営者はときどき、自分の発言と行動を振り返る必要があります。

自分は何を大切にすると言ってきたのか。そして、日々の行動はその言葉に沿っているのか――経営理念や方針を立派な言葉で語ることよりも、その言葉を日常の判断に反映させることが重要です。

社員に伝わるのは、経営者が語る理想だけではありません。毎日の行動を通して示される、経営者自身の価値観なのです。

完璧な言行一致を目指さなくてもいい

リーダーは、自分の言葉と行動を一致させることが大切です。しかし、すべての発言において、完璧な言行一致を実現する必要はありません。

人間である以上、判断を間違えることもあれば、思うように行動できないこともあります。経営者だからといって、常に正しい判断ができるわけではないでしょう。

大切なのは、自分の言葉と行動に矛盾が生じたとき、それを認めて修正できることです。

例えば、社員に「困ったことがあれば、いつでも相談してほしい」と伝えていたにもかかわらず、忙しさを理由に相談を後回しにしてしまったとします。

そのとき、「忙しかったから仕方がない」と片づけるのではなく、「相談してほしいと言っていたのに、十分に話を聞けていなかった」と振り返ることが重要です。

必要であれば社員に謝り、改めて話を聞く時間を設ければよいのです。

倫理学においても、人間がどのように生き、行動するべきかという問いは重要なテーマの一つです。言行一致について考えることも、自分が大切にする価値観と、実際の行動との関係を見つめ直す機会になるでしょう。

リーダーの信用は、大きな決断より小さな行動でつくられる

会社の将来を左右する経営判断や、社員の心を動かすような発言が、リーダーの信用をつくると考える方もいるでしょう。

もちろん、重要な局面での判断は大切です。しかし、日々の小さな行動も、周囲からの信用を左右します。

例えば、次のような行動です。

  • 約束した期限までに返事をする
  • 社員との面談時間を守る
  • できないことは安請け合いしない
  • 方針を変更したら、その理由を説明する
  • 自分の間違いに気づいたら素直に認める

いずれも、特別な能力や大きな決断を必要とするものではありません。

しかし、こうした行動を日々積み重ねることで、社員は「この人は自分の言葉に責任を持つ人だ」と感じるようになるでしょう。

反対に、小さな約束を何度も破っていれば、どれほど立派な経営理念を掲げても、言葉に説得力が生まれにくくなります。

信用は、一度の大きな行動で完成するものではありません。日々の言葉と行動が積み重なった結果として、少しずつ形になっていくものです。

今日の一歩|過去の「小さな嘘」を一つだけ修正する

今日の一歩として、過去1か月を振り返り、「言ったままになっていること」を一つだけ思い出してみてください。

例えば、次のようなことはないでしょうか。

  • 「今度ゆっくり話そう」と伝えたままになっている
  • 「検討しておく」と言いながら、何も進めていない
  • 実現できる見込みがないのに「できます」と答えてしまった
  • 以前の方針を変更した理由を説明していない

これらは、必ずしも相手をだまそうとして生まれた嘘ではありません。

その場では本当に実行するつもりだったのに、忙しさのなかで忘れてしまったこともあるでしょう。

しかし、相手にとっては、今も待ち続けている約束かもしれません。

思い当たることがあれば、今日、一つだけ修正してみましょう。

  • 守れる約束なら実行する
  • 守れないのであれば、その事情を正直に伝える
  • 考えが変わったのであれば、なぜ変わったのかを説明する。

過去のすべての矛盾を、一度に解消する必要はありません。

大切なのは、自分の言葉と行動のずれに気づき、そのまま放置しないことです。

リーダーの信用・一貫性についてよくある質問

リーダーが社員から信用されるためには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。

ここでは、リーダーの一貫性や言行一致について、よくある質問に回答します。

リーダーに一貫性が必要なのはなぜですか?

リーダーに一貫性が必要なのは、社員が安心して判断し、行動できる環境をつくるためです。

例えば、昨日と今日でリーダーの言うことが違っていたり、社員によって指示が変わったりすれば、現場は混乱してしまいます。

社員は自分の判断に自信を持てなくなり、何をするにもリーダーの顔色をうかがうようになるかもしれません。

一方、リーダーの判断に一貫した軸があれば、社員も会社が何を大切にしているのかを理解しやすくなります。

信用されるリーダーにはどのような特徴がありますか?

信用されるリーダーには、自分の言葉に責任を持ち、社員に対して誠実に向き合うという特徴があります。

具体的には、次のような行動が挙げられます。

  • できない約束を安易にしない
  • 一度約束したことは実行する
  • 社員によって態度や判断基準を変えない
  • 自分の間違いを認め、必要に応じて訂正する
  • 経営方針を変更するときは理由を説明する

これらに共通するのは、相手に対して誠実であろうとする姿勢です。

経営者だからといって、すべての質問に答えられる必要も、常に正しい判断を下せる必要もありません。

わからないことはわからないと伝え、間違えたときには素直に認める。そのような姿勢も、社員との信頼関係を築くうえで重要です。

リーダーが部下から信頼されるために大切なことは何ですか?

部下から信頼されるためには、相手の話に耳を傾け、約束したことに責任を持つことが大切です。

経営者は会社全体を見て判断する立場にありますが、社員は日々の業務を通して、経営者とは異なる課題に気づいていることもあります。

そうした現場の声を聞かず、一方的に指示を出しているだけでは、社員との信頼関係を築くことは難しいでしょう。

また、社員の意見をすべて採用する必要はありませんが、採用できない場合も理由を説明することが重要です。

言行一致するリーダーになるには何を意識すればよいですか?

言行一致するリーダーになるためには、まず自分が発した言葉と、その後の行動を振り返る習慣を持つことが大切です。

例えば、「社員が主体的に判断できる会社にしたい」と考えているのであれば、実際に社員へ判断を任せているかを振り返ってみましょう。

「仕事を任せたい」と言いながら、細かなことまで自分で決めているのであれば、言葉と行動にずれが生じているかもしれません。

その場合は、社員に任せられる業務を一つ増やすなど、具体的な行動を変えることから始めてみてください。

まとめ|リーダーの信用は、日々の言葉と行動の積み重ねから

リーダーの信用は、立派な経営理念を掲げることや、大きな決断を下すことだけで生まれるものではありません。

できない約束をしない。一度言ったことに責任を持つ。判断を変えたときには、その理由を説明する。

こうした小さな行動の積み重ねが、社員との信頼関係を築いていきます。

もちろん、経営者も人間である以上、間違えることはあります。大切なのは、完璧な言行一致を目指すことではなく、自分の言葉と行動の矛盾に気づき、修正する姿勢です。

まずは今日、過去に交わした小さな約束を一つだけ振り返ってみてください。

昨日の自分と今日の自分が握手できるような経営を、日々の行動から始めてみてはいかがでしょうか。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

目次