会社をたたんだ後に元従業員から「源泉徴収票が必要になった」という連絡がくることは少なくありません。転職先の年末調整で必要になってくるからです。
もし、廃業や倒産の後、源泉徴収票が必要となった場合、どうやって発行すればいいのでしょうか。
今回は、源泉徴収票を出すにあたって既に廃業や倒産の手続きがとられている場合のケースについて解説していきます。
「源泉徴収票の発行をしたいけど、会社がもうない…」
そういったトラブルに発展しないためにも気をつけるべきことをみていきましょう。
源泉徴収票・給与支払報告書とは?
廃業や倒産後の源泉徴収票について調べると、「給与支払報告書」という用語もセットで出てきます。この2つは似ていますが、用途が異なります。まずはどのようなときに使用されるものなのかを把握しておきましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、事業主がその年度に支払った給与と源泉徴収税額が記載されている書類になります。この書類は従業員へ渡されますが、ある一定の条件に該当した人のみ税務署に提出することがあります。一般的には、従業員へ渡すもので、給与の支払い、税金を納めたことを証明するためにあります。
今回のケースは、この書類を元従業員に求められた場合に発行できるかを問題としています。
給与支払報告書
給与支払報告書の内容は源泉徴収票とほぼ同じ内容になりますが、これは従業員本人には渡されず、毎年1月1日時点で該当者が居住している市区町村へ提出します。
記載されている給与額に基づき、その翌年の住民税が決定される根拠となります。毎年の年末調整で、経理や税理士によって行われているものなので、知らない人も少なくないのではないでしょうか。
廃業・倒産していても源泉徴収票を発行する義務がある
結論から申し上げますと、廃業していても、倒産していても、事業主は退職後1か月以内に源泉徴収票を従業員に交付する義務があります。(所得税法 第266条1項)
前年中(前年1月1日~12月31日まで)の給与、賃金、賞与などの支払いを行ったすべての事業主が対象となります。前の職場に「扶養控除等異動申告書」を提出していて給与の支払いがあった人については、前職の給与も含めて年末調整を行う必要があります。
ちなみに「扶養控除等異動申告書」を提出していない場合、乙欄適用である場合は確定申告をすることになります。年間の給与を合算して年末調整をする必要があるため、前の職場での給与額の分かる「源泉徴収票」は、必要不可欠です。これがないと、従業員自ら確定申告をすることになります。
交付できない、発行できない場合はどうするのか?
廃業時や倒産時には1か月以内に源泉徴収票を交付することになっていますが、これができない場合はどうすればよいのでしょうか。
廃業の場合は清算人、倒産の場合は破産管財人と呼ばれる人が実施するのが一般的です。彼らが手続きを失念してしまうことや対応できないことがあります。
源泉徴収票が欲しいと思っても誰も対応してくれないということになり、業を煮やした従業員は、税務署に駆け込んで「源泉徴収票不交付の届出書」という書類を提出して、税務署からの行政指導をくらうこともあります。
もちろん、会社が存続しているうちは対応できますが、会社が閉鎖登記をすることで会社は法的に消滅するため書類を作ることができなくなります。これはどうすることもできません。
事業主としては、廃業・清算する年の1月1日から最終給与までに支給した給与について、会社は「給与所得の源泉徴収票」を発行しなければならないということを、意識しておきましょう。
廃業時の清算人の退職日・源泉徴収票について
事業主本人(清算人)の源泉徴収票も発行が必要になります。ただ、退職日はいつになるのかは難しい問題です。一般的には、清算決了になることが多いようです。その点では、今までみてきたように他の従業員とは退職日が異なる点にも注意しておきましょう。