補助金は基本的には事業継続が前提
事業を継続することをやめて会社をたたむ廃業において、過去にもらった補助金は返す必要があるのでしょうか。例えば「半年前にもらった補助金をそのままもらった状態でよいのか?」、悩むことがあるでしょう。
基本的に補助金は事業継続を前提として出されています。特にコロナの影響を受けた事業の継続・回復を支援する事業復活支援金では、実際に、「事業復活支援金に係る宣誓・同意書」にサインをしているはずです。
そこには、「支援金の給付を受けた後にも事業の継続及び立て直しをする意思があり、事業の継続及び立て直しのための取組を対象月以降に継続的に行うこと」とあり、これに違反した場合は「速やかに事業復活支援金事務局に支援金を返還します。」との文言があります。
つまり、事業を継続する意思の宣言をしていることになります。
返還すべきかの判断は「補助金を管轄する経済産業省や地方自治体」
補助金は事業継続をするためのものであることを考えると、基本的には返還しないといけないということになるでしょう。ただし、申請時点で廃業を意図していた場合で、その後に大きく事業環境が変わってしまったことによる廃業ということもあるでしょう。
変換すべきかを判断するのは、補助金を管轄する経済産業省や地方自治体です。コロナでの助成金詐欺の摘発事例が多くあります。補助金が出た後もチェックされていることを忘れないでください。
補助金で買ったものを売却した場合は?
廃業にあたって、補助金を活用して得た財産を売却した場合はどうなるのでしょうか。少しでも現金化して、借金に充てたり、株主に配分したりしたいと思うことでしょう。
例えば、経済産業省書簡の補助事業などによって取得した財産については、経済産業省によって「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取り扱いについて(平成16年6月10日 最終改正:令和元年5月7日)」という公表資料で記載されています。そこで記載されていることは、補助金を活用して得た財産を売却した場合は、その金額に補助率を掛けた金額を返還する必要があるということ。また、無償で譲渡等した場合は残存簿価に補助率を掛けた金額を返還する義務があり、担保の場合は、その金額に補助率を掛けた金額を返還する必要がある旨が記載されています。
特に事業再構築補助金では、廃業ではなく、新しい事業を作って挑戦するための補助金です。このため、当該事業の進捗報告が必要です。報告を怠ると補助金の返還を求める場合があるとされています。
補助金で購入した財産の処分については、各省庁のホームページで記載されていますので、管轄する省庁などに合わせて確認してみてください。
廃業時に活用できる補助金がある
ここまでは、かつて支給された補助金の返還について書いてきましたが、廃業のための補助金の制度があります。
まずは「事業承継・引継ぎ補助金」です。事業承継・引継ぎ補助金は「経営革新」と「専門家活用」があり、廃業時に使われる補助金は「専門家活用」のほうです。また、「円満廃業ドットコム」の読者の皆様は廃業を考えている事業主の方々が中心と思われますので、「専門家活用」の「買い手支援型」「売り手支援型」のうち、「売り手支援型」を考えることになります。
とはいえ、なかなか売り先が見つからないのも現状です。引継ぎ先がない場合でも、廃業にかかる経費を自治体が独自で支給していることもあります。話題になったのは杉並区の廃業経費補助金制度です。新型コロナウイルス感染症の影響により、やむなく事業を廃業された個人事業者等の方へ、廃業後に発生した店舗の家賃相当分の費用を補助するものでした。廃業後の再チャレンジを支援する自治体もあります。
港区は、「創業支援 港区創業再チャレンジ支援事業補助金」を用意しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により倒産、又は廃業した事業者が港区内で創業する場合に、補助対象系の3分の2を補助すると発表しました。
補助金は世の中の状況によって次々と作られ、また廃止されていきます。自分が使えるものがあるか、自治体や政府のホームページを確認してみてください。
補助金と助成金の違い
廃業にあたって本件のようなご相談をいただく場合、補助金と助成金の違いについて聞かれることも多いため、最後に違いを整理しておきます。
政府や自治体による補助金や助成金は数多くの種類があります。それぞれ要件が決まっており、その中には廃業に関するものがあります。補助金と助成金の違いを考えるにあたってまずは共通項を挙げます。
補助金も助成金も、政府や自治体などが設定します。管轄する期間もさまざまで、経済産業省や区などの地方自治体が個別に定めているものがあります。管轄期間によって、補助金や助成金に詳しい士業の人たちが異なるのも現実です。例えば、雇用に関するものだと厚生労働省が管轄であったりすることが多く、社会保険労務士が詳しいのが一般的です。例えば製造業における事業そのものを扱う補助金は経済産業省や地方自治体の中小企業を支援する部署であったりすることが多く、税理士が情報に詳しいことが多いです。このように、管轄する機関によって相談できる士業が異なることも多いため、相談先は複数持っておくことをお勧めします。
補助金と助成金の違いについて考えてみます。補助金は何らかの政策目的の達成のために税金を使って企業や個人事業主を支援する制度です。国や自治体などが主体となって運営しています。計画性を持って予算を策定し、その予算額に上限があるため、要件を満たせば必ず採択される訳ではありません。このため、常に補助金のアンテナを張っておき、速やかに申請することが求められます。予算の上限に達した段階で打ち切られるのが補助金です。支給額が助成金に比べて大きい場合が多いのも特徴です。
一方、助成金は一般的には主に厚生労働省によるものです。厚生労働省が雇用増加や人材育成のために実施しています。このため、助成金に関しては社会保険労務士が、助成金の申請代行業務を独占しています。基本的には社会保険労務士に相談するものです。
「過去にもらった補助金は返すべき」という考え方をもって個別に確認を
基本的に補助金は事業継続のためのもの。税金が使われたものでもあり、本来の趣旨に添わなくなった場合は、なんらかのロジックをもって変換する必要があると考えておきましょう。実際に変換すべきかどうかは、その時の状況を踏まえて判断することをお勧めします。事前に税理士などに相談してみてはいかがでしょうか。