「ゼロゼロ融資」を受けた企業の倒産が増えている?

「ゼロゼロ融資」を受けた企業の倒産が増えている?

全国企業倒産集計 2023 年 5 ⽉報のレポートで、「ゼロゼロ融資」を受けた企業の倒産が増えているという結果がニュースとなりました。なぜゼロゼロ融資を受けた企業の倒産が増えているのか、中小企業の経営者としてやれることはどのようなことがあるのか、当記事では考えてみます。

目次

「ゼロゼロ融資」とは

「ゼロゼロ融資」とは、新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業を支援するための、実質無利子、無担保で融資する仕組みのことです。新型コロナウイルスの感染拡大初期は日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関を中心に広がりました。その後、新型コロナウイルスは拡大し、多くの企業の業績が悪化することで、その利用ニーズが一気に広がりました。このため、2020年5月からは民間金融機関も融資できるようになりました。

その返済がこの夏から本格化する中、融資を受けたあとに倒産した企業がことし5月までに236件確認され、去年の同じ時期の1.5倍に増えたことが分かり、ニュースとなったのです。

倒産が増えることは実は予想されていたこと?

実は、不況になると当局が資金繰り支援策を実行し、不況を脱し始めたあとにその支援策を縮小し始めると、遅れて延命企業の倒産が増えるということはかつても繰り返されてきた歴史があります。

ゼロゼロ融資を受けた企業の中には、コロナ禍がなくとも倒産していた会社も含まれていたことが予想されます。また、コロナ禍のまえには経営が健全だったものの、本当にコロナ禍で資金繰りが苦しくなった会社も含まれているはずです。

前者(コロナ禍がなくとも倒産していた会社)の延命に使われることは、ゼロゼロ融資の制度創設時から折り込んでいたと思われるため、倒産件数がある程度増えるのはやむを得ないと考えることができます。

一方、コロナ禍の前には健全経営だった後者は、コロナ禍が収束すれば業績回復が期待できたはずです。しかしウクライナ問題で引き起こされた原材料やエネルギー価格高騰に苦しみ、思うように業績回復ができずやむを得ず倒産となった企業もあると想像されます。

ゼロゼロ融資で損をするのは誰?

民間金融機関のゼロゼロ融資で利子を負担するのはどこでしょう?実は「都道府県」です。もし、この制度を利用した企業が返済できなくなった場合に備えて、元本の保証を各地の「信用保証協会」がやっています。実際に経営状況が悪化して返済が困難となった場合には、元本の最大8割もしくは全額を信用保証協会が肩代わりするという仕組みで成り立っています。

つまり元本は国が財政面を支援している信用保証協会によって保証されています。利子についても利子補給制度で補填されています。

実際に融資をする金融機関にとっては、これはおいしい話です。融資利ザヤの獲得が難しい昨今、比較的、高い金利を得られます(借りる事業者は無利子ですが、都道府県が金融機関に利子を補填するため)。もし事業者が破綻しても、信用保証協会が債権を保証してくれるので、リスクが低い、またはリスクがありません。こうなると、金融機関も積極的に融資をできるメリットがあります。元本は国が財政面を支援している信用保証協会なので、元をたどれば税金ということは想像に難くありません。そのような仕組みで日本経済を立て直そうと、ゼロゼロ融資が進められてきました。

「ゼロゼロ融資」による倒産は本当に多いのか?

全国企業倒産集計 2023 年 5 ?報によれば、倒産による貸し倒れ額は470億円とのこと。約融資総額43兆円のうち、470億の貸し倒れなら、貸し倒れ率は0.1%強となります。貸し倒れ率としては、「かなり高い」とまでは言えないでしょう。

ただし、コロナ融資後倒産したのが 236 件で、前年同期(151 件)の約 1.6 倍という数字を考えれば、増えていることは事実です。さらに、このデータは倒産取材の中で、きちんと事実確認ができたケースを集計したものです。一般的に、倒産取材では総じて関係者の口が固く、ノーコメントに終わることも少なくないと予想されます。このため、実際にはさらに多くの「ゼロゼロ融資後倒産」が発生していると想像することはできます。「極端に多くはないが、増えている」というのが現状ではないでしょうか。

ゼロゼロ融資による倒産は増えてはいるけど、みんなが倒産してるわけではないにゃん

中小企業はどうすればよいのか

中小企業の経営では資金繰りの悩みはつきもの。キャッシュフロー経営は日頃のコスト削減の意識が欠かせません。しかし、ゼロゼロ融資を受けた後に、返済や金利支払いがない期間には少し安堵して、健全に自社にプレッシャーをかけ続けるのが難しいという現実もあるでしょう。しかし、倒産する前に大胆に無駄を省き、キャッシュフローを意識した経営変革をしていかなければなりません。

しかし中小企業の社長はこう思うのも事実。「専門家はそう簡単に言うけど、具体的なアイデアもない。できるならみんなやってるよ」と。ある意味、具体性のないアドバイスは無責任ともいえるでしょう。

具体的には「ゼロゼロ融資」などの借り換えを保証する「コロナ借換保証制度」や、日本政策金融公庫の低利子での融資制度の利用が選択肢になります。ただし、これは資金繰りの対処方法にすぎませんが、延命をしながら本気で次の対策を考えることはできるかもしれません。

債務を完済する目途が立ったら、廃業を選択肢に入れるのも一つの方法です。倒産で終わるか、廃業で終わることができるかは大きな違いです。廃業のタイミングを見極めて、計画的に資産を残して廃業をするために、債務をしっかりと返済していくことが必要です。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

目次