融資の際に経営者保障が不要に!銀行が融資慣行見直しの動き

会社が融資を受ける際、経営者が個人保証を提供する経営者保証は、ながらく日本で一般的な慣行となっていました。特に中小企業(オーナー企業)が融資を受ける際は、ほとんどのケースで経営者保証が求められてきました。いま、その慣行が変わりつつあります。

目次

融資の際に求められる経営者保証とは

経営者保証とは、会社が貸付金を返済できない場合に、経営者個人がその責任を負う(個人保証)ことを意味します。この慣行は、特に中小企業において顕著であり、融資機関がリスクを管理する手段として利用されてきました。

経営者保証・個人保証の弊害

この経営者保証は、融資を受けた側の企業が、その資金を有意義に、価値を生み出すものとして利用すべく、会社経営の規律づけに寄与するというメリットがあります。

経営者保証は「借りたお金はちゃんと使って、利子を付けて返してね。返せないとあなたの資産から返してもらうよ」という話だにゃん

しかし、もし事業に失敗すると経営者は自宅などの不動産や私財を投げ出して返済しないといけません。この個人保証は生活に大きな影響が出るどころか、再起不能になってしまうリスクがあります。このため、借りたお金を変革のための思い切った事業転換や再挑戦に使うことがむつかしいというデメリットがあります。

この心理的負担の重さは、これから起業しようという人や、これからスケールアップして成長していこうとするスタートアップの育成などにブレーキをかけてしまう可能性もあることが指摘されてきました。

この問題への対策として、経営者保証の制度改革が検討されてきています。例えば、保証の範囲を限定することや、経営者保証に代わる他の担保方法を模索することが提案されています。

経営者保証を求めない取り組みを始めた銀行

そのような中、この経営者保証の慣行を見直す動きが地方銀行を中心に始まりました。山陰合同銀行などが早い時期から経営者保証を取りやめています。山陰合同銀行は、企業への新規融資に経営者保証を求めることを原則的に取りやめ、2023年4月以降は無保証とすることを発表。これによって、起業する際などに融資を受けやすくし、さまざまな産業を活性化されることを狙い、事業を後押ししていきます。

「地方銀行は、融資を通して既存産業と新規産業の再生支援をおこなって地域経済における新陳代謝を促進させていく役割があるにゃん。どんどん経済を活性化させるには、もっと経営者に攻めてもらうのが良いと考えたのかもしれないにゃん」

現在、東京スター銀行、北国銀行、東日本銀行、西京銀行、山陰合同銀行などは、融資の際の無保証融資率が8割近くまたはそれ以上と高い実績を残しています(金融庁の調査より)。金融庁もこれを後押しし、「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」と題してさまざまな取り組みを発表しています。

融資の際に、原則として経営者保証を求めないと発表した地銀は2024年2月時点で14行くにもなりました。北洋銀行、八十二銀行、南都銀行、紀陽銀行、山陰合同銀行、広島銀行、西京銀行、阿波銀行、福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行、豊和銀行、琉球銀行、北国銀行です。

特に北国銀行はプロパー融資の経営者保証を廃止という踏み込んだ取り組みを実施しています。プロパー融資とは、信用保証協会の保証等がなく、銀行自身が100%リスクを負うもののことで、かなり踏み込んだ取り組みと言えるでしょう。

もともと、メガバンクのような大手銀行に比べて、地方銀行は無保証の割合が高かったという背景もあり、それを是正しようという流れになっているにゃん。経営者によってはチャレンジができるにゃん

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中小企業庁が始めたスタートアップ創出促進保証制度~個人保証なし!

中小企業庁も中小企業が融資をもっと受けやすくすべく、「スタートアップ創出促進保証制度」を令和5年3月に開始しました。これは、創業から一定期間を経過していない会社等を対象に、経営者保証を不要とした創業時の新しい信用保証制度です。この制度も軽視者保証が不要な融資制度です。

スタートアップ創出保証制度が受けられる創業予定の個人・企業

スタートアップ創出保証制度が受けられる創業予定の個人・企業はつぎの2つの例です。1つ目は、事業を営んでいない個人で、2か月以内に法人を設立し事業を開始する具体的な計画がある例です。2つ目は、分社化により別法人を設立して事業を開始する予定の法人です。個人でなくとも、会社が分社化して新規事業を開始する予定があるときにも使うことができます。

スタートアップ創出保証制度が受けられる創業済みの個人・企業

スタートアップ創出保証制度は、すでに創業済の会社・個人でも適用が可能です。1つ目は、事業を営んでいない個人が設立した法人で、設立から5年未満である場合です。創業間もないケースでの適用になります。分社化してから間もない場合も同様で、分社化により別法人として新たに設立した法人で、設立から5年未満である場合に適用の対象となります。

個人の場合も創業済みでも適用が可能です。事業を営んでいない個人が開始した事業を法人化し、個人創業時から5年未満である場合がその対象です。

保証限度額や返済方法などは、以下の概要を見てみましょう。

スタートアップ創出促進保証制度の概要

会社が融資を受ける場合、専門家に相談を

会社が融資を受けようとしているとき、銀行だけでなく、税理士といった専門家に相談をすることで、さまざまな打ち手を検討することができます。いまや個人保証が前提の時代ではなくなりました。

変革のための足かせになっていた経営者保証をすることなくチャレンジをするためにも、融資に関する最新のニュースにアンテナを張っておくか、最新のニュースを提供してくれる専門家を身近に置いておきましょう。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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