広がる休廃業・解散 – 「あきらめ廃業」?

帝国データバンクが実施する『全国企業「休廃業・解散」動向調査(2023)』が発表されました。この調査によって、2023年に全国で休業・廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む)が前年よりも10%増えていることが明らかになりました。

帝国データバンク:全国企業「休廃業・解散」動向調査(2023)

休廃業・解散件数は地域によっても差がありますが、増加率が前年比で最も高いのは、徳島県の31.4%でした。他にも上位に愛媛県、富山県、石川県、大分県が前年比20%以上の休廃業・解散件数となりました。

業種別にみると、休廃業・解散の前年比増加率トップは税理士事務所です。続いて一般機械修理、書店と続いています。

AIの活用が進む中、昔ながらの税理士事務所は厳しい立場におかれているのかもしれないにゃん。

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一時は休廃業・解散件数は減っていたが…

実は、企業・個人の休廃業・解散件数は、政府による実質無利子・無担保融資などの資金繰り支援によって減少傾向となっていました。新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業を支援するための、実質無利子、無担保で融資する「ゼロゼロ融資」によって、延命された企業は多かったとされています。

しかし、ゼロゼロ融資は22年9月(民間金融機関は21年3月)に貸付を終了しました。新型コロナウィルスも5類へ移行し、各種支援の対象から外れてきています。これによって、ゼロゼロ融資を受けた企業の倒産が増えるのではないかということが言われてきました。

参考記事:「ゼロゼロ融資」を受けた企業の倒産が増えている?

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そこに物価高や、賃上げへの圧力といった要素が重なり、「ここが潮時か」と考えて廃業するケースが増えているように見えます。このように、自社事業の先行きを検討した結果、ダメージが広がる前にやむなく事業をたたむ決断を下した健全企業の動きを、帝国データバンクは「あきらめ廃業」と表現しています。

また、事業承継が声高に叫ばれる中、金融機関やM&A仲介企業によって、バイアウトの動きも出てきているかもしれません。いまはインターネットで売却先を募れるポータルサイトも出てきています。このような前向きな廃業と「あきらめ廃業」とが混在しているのではないかというのが帝国データバンクの見方です。

黒字で廃業できる企業が減っている

円満廃業.com では、債務などを抱えて倒産するよりも、業績が良いうちに先を見据えて円満な廃業の良さを伝えてきました。しかし、2023年の休廃業のデータを見ると、休廃業直前期が黒字の企業は51.9%です。この数字は年々低下してきています。

業歴が浅い企業でも休廃業が増えている

なお、東京商工リサーチも同様の調査結果を発表しました。

2023年の「休廃業・解散」過去最多の4.97万件、赤字率は過去最悪、倒産増で「退出企業」も過去最多

業歴別に休廃業した企業の構成比を見ると、最も多いのはやはり10年以上20年未満の21.2%(前年22.6%)です。次いで30年以上40年未満の16.2%(同16.7%)でした。

ここまでは想像がつきますが、業歴が5年未満と浅い企業の構成比が15.1%と、前年(13.3%)より1.8ポイント増加しました。コロナ前後で企業したものの、想定外の外部環境に振り回され、ここで力尽きたということでしょうか。

ベンチャー企業は、デットやエクイティを駆使して成長していきますが、そのようなスタイルではない、いわゆる「スモールビジネス」では厳しい状況が出てきたのかもしれません。今後の動向が注目されます。

まとめ

企業経営は判断の連続です。廃業の判断を良いタイミングで実施することで、資産を残しながら解散することができます。専門家とも相談しながら、従業員たちのことも考えながら経営判断を下していきたいものです。

 エマニャン

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円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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