会社をたたんで廃業し、経営者が引退を迎え、事業から手を引いた後の生活。多くの中小企業経営者にとって、これは新たな始まりであり、同時に大きな不安を伴う瞬間です。特に、収入源が途絶えた際の国民年金保険料の支払いは、予期せぬ負担となることも少なくありません。
年金制度には、引退後の経済的な不安を和らげる支援策が存在します。それが、「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」です。しかし、これはすぐに適用しようとしても難しいことも多く、条件が厳しく設定されています。当記事では、引退後の収入がない状況になった元経営者の皆さまが、この制度を利用し、経済的な安定を得ることができるのかを考えてみます。
国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度とは
大前提として、年金の保険料は毎月納めることが義務とされています。保険料を未納のままにしておくと、将来の「老齢基礎年金」や、障害・死亡といった不測の事態が生じたときの「障害基礎年金」・「遺族基礎年金」を受け取ることができない場合があります。
しかし、収入の減少や失業等により保険料を納めることが難しくなった場合に保険料を「全額免除」または「一部免除」する制度があります。これが、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度です。
経済的に苦しくて未納になってしまうなら、免除制度を申請するとよいにゃん
国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度の条件
実は、引退した元経営者がこの国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度を使おうとした場合、考慮すべき点がいくつかあります。
前年度の所得・年収をベースに計算される
一つ目は、前年度の所得・年収をベースに計算されるということです。1月から6月までに申請される場合は前々年所得・年収となります。まず、適用される所得・年収を見てみましょう。
※右記事をベースに作成 https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/51574/
免除になる所得
猶予になる所得
例えば、2023年10月に廃業して収入がなくなった場合、免除制度・納付猶予制度を適用するには、その前の2022年の年収をベースに判定されます。普通に事業を運営していた場合は、2023年の1月から10月までの間、経営者には役員報酬が入っていることでしょう。その1年前であれば1年分しっかりと収入があったと思います。つまり、すぐに適用は難しいことが多いのです。
配偶者の所得も考慮される
適用に当たっては、世帯主・配偶者各々の所得審査を行います。配偶者の収入も併せて考慮されるため、この点も注意しましょう。
申請は電子申請も可能
申請自体はマイナポータルを利用した電子申請でいつでも免除等が申請できますが、ご自身の状況を整理し、適用されるかどうかの判断が難しい場合は、年金事務所に相談してからをお勧めします。
すぐには難しいかも。免除・検討の余地はある
厚生年金に入って、ちゃんと収入を得ていた人にとって、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度は多くの場合、使うのが難しいことが多いです。
前年度をベースに判断されるので、引退度しばらくたってから、年金事務所に相談するのが良いでしょう。収入がなくなったからといって、すぐに適用されるものではないことに注意しましょう。
なお、免除された期間があると、保険料を全額納付したときに比べ、将来受け取る年金額が少なくなることにも注意です。それが困る場合は、免除された保険料を、収入が安定したときに後から収めることができます。具体的には、10 年以内であれば、後から納めること（追納）ができる制度があります。
この追納によって後から年金を収めると、保険料を全額納付したときと同じ状態になります。なお、老齢基礎年金を受け取っている場合は追納できません。
追納を行う場合は、お申し込みが必要だにゃん。年金事務所に相談することをお勧めするにゃん
引退後は、これまでの事業からの収入がなくなり、新たな生活の調整が必要となります。この重要な過渡期において、国民年金保険料の免除や納付猶予は、経済的な負担を軽減し、平穏な老後を送るための一助となります。
廃業による失業ということで申請する場合は、履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書も用意するようにしましょう。まずは年金事務所に相談してみてください。ただし、多くの場合、そう簡単に免除されることは難しいということを頭に入れておきましょう。
