中小企業の廃業の理由トップ5

中小企業が直面する厳しいビジネス環境の中で、多くの企業が廃業に至る理由は多岐にわたります。経済の変動、資金繰りの困難、後継者不足、技術の進化に対応できないなど、廃業を決断する背景には、さまざまな要因が絡み合っています。しかし、アンケートを取ってみると、「廃業した一番の理由」は、以外にも上位5つに集中しているのです。当記事では、中小企業の廃業の理由について、上位5つを紹介します。

目次

中小企業の廃業の理由とは

中小企業の廃業理由は、日本政策金融公庫による「経営者の引退と廃業に関するアンケート(2023年調査)」で、廃業の主な理由を見ることでわかります。

この調査は複数回実施されていて、最初は日本政策金融公庫総合研究所が2019年に、経営者の引退に伴い廃業した元経営者(引退廃業者)を対象に「経営者の引退と廃業に関するアンケート(2019年調査)」を実施したもので、最新が2023年のものです(2024年2月時点)。

当調査で見られた、企業の廃業のトップ5は以下のものでした。回答者が、廃業の理由として一番のものを挙げたものです(複数回答ではありません)。

廃業のもっとも大きな理由として挙げられた上位5つは、

  • 気力・体力の衰え
  • 高齢
  • 売り上げの低迷
  • 自身の健康上の理由
  • 他社で勤務することになった

でした。

廃業理由の多くが経営者自身の理由によるもの

上記の5つの廃業理由を見てみると、多くは多くは外的要因ではなく、経営者自身の理由によるものであることがわかります。外的要因のものは、「売り上げ低迷」の1つしかありません。

なお、廃業理由の中で、近年、急に増えたのは、「高齢」です。2023年で実に17.3%。15-19年廃業は7.2%。10-14年廃業では7.7%ですので、大きく増えていることがわかります。

気力の衰えが廃業理由のケース

廃業理由のトップは気力・体力の衰えです。2番目の高齢ともリンクするものではありますが、より「モチベーションの低下」という側面が強いように見えます。ある元経営者は、「仕事がどんどん大手や海外に取られていく。もう昔のようには戻れない」と話していました。

地方都市で雑貨屋を営んでいた山下裕子さん(55歳、仮名)は、時代が変わったといいます。「私の店は地域の皆様に愛され、小さなコミュニティの一部として機能していたと思うんです。これが事業を継続していた唯一の理由だったのですが、そのような仁義に厚い世の中でもなくなってしまいましたしね。」と寂しそうに話してくれました。

さまざまな理由で廃業を決めるものの、その決断時に、「昔のような気力が残っていない」と気づかされる経営者は多いのではないでしょうか。

自身の健康上の理由で廃業するケース

健康上の理由は発生してしまってはどうしようもありません。動けなくなってしまうと、引継ぎの時間すら十分にとれません。経営陣の健康状態は、盤石であるべきです。健康診断や人間ドックをきちんと受けるようにしましょう。中小企業における最大の経営資産は、経営者の健康といっても過言ではないくらいに大事です。

ちなみに、経営者や役員だけなど特定の人に限定して受診したものでないなら、経営者の人間ドックの費用も助成金の対象となります。経営者だけに限定するとその限りではありません。会社の社員全員が受けられる福利厚生として整備する必要があります。

また、各種健康保険組合、または国民健康保険でも一部、人間ドックの助成金を出していますので、自分が加入している保険者、または自治体の窓口に問い合わせて確認してみましょう。

自営業のフリーランスや一人社長の場合、人間ドックは事業経費として計上できないので注意だにゃん

健康を理由に廃業したことで、新たな気付きを得た元経営者もいます。大病を患って廃業を余儀なくされたAさんは、「人生の大切さを知った」といいます。「廃業後は、長期間の治療とリハビリに専念しました。この期間を通じて、私は健康がいかに重要であるか、そして人生において最も価値のあるものが何かを再認識しました。健康を犠牲にしてまで仕事を続けることのリスクを深く理解し、今後は自分の体を大切にすることを心がけています」と語り、廃業後は人生を有意義なものにするためにいろいろなことにチャレンジしているといいます。

売り上げの低迷が廃業理由のケース

この廃業理由が、トップ5の中で唯一、経営者自身の理由ではないものです。経済環境の変化や消費者ニーズの多様化により、中小企業の売り上げが低迷することは珍しくありません。例えば、デジタル化の波に乗れず、売り上げが年々減少。競争が激化する市場の中で生き残るための資金と戦略が不足し、最終的には廃業に至るのはとても残念なことです。

早めに廃業の決断をして資産を残すか、早めに経営変革の着手をするしかありません。わかっていてもなかなか手がつかないということも多いようですので、専門家に相談するのも方法の一つです。

他社で勤務することになって廃業したケース

この廃業理由は、従業員が少ないまたはいないケースでしょう。社長本人のスキルに関してはニーズがあるものの、会社組織として続ける理由がないということですね。

小さな物流会社を経営していた山村裕司さん(62歳、仮名)はコンサルティング会社への就職を決めました。「私は長年の経験を通じて得た知識や技能を地域社会に還元することはやめません。小規模ビジネスのコンサルティングや若手起業家へのアドバイスなどを通じて、私の経験が次世代に生かされることを願っています。

また、長年支えてくれた顧客や地域の皆様に対して、深い感謝の意を表したいと思います。私の経営人生は終わりましたが、新たな形で地域に貢献していく所存です」と、山村さんはコンサルティング会社で勤務する意気込みを語ってくれました。

落としどころを考えて円満な廃業を

このようにやむを得ない理由で廃業するのでは、あとで後悔が残ってしまいます。そうなる前に、落としどころを持って計画的・円満に廃業することで、次の人生のリスタートを切ることができます。そのためには、「自分はそもそも後継者についでもらいたいと思っているか?」「子供を含めた後継者に会社を継ぐ意思があるか確認しているか」「いま廃業したときに、どれくらいの資産を自分に残せるのか考えているか。

この先、残せる資産が増える見込みがあるのか考えているか」など、今一度、状況を見つめなおしてはいかがでしょうか。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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