自主廃業時の清算人には誰がなる?

自主廃業時の清算人には誰がなる?

中小企業経営者の6割以上が60歳以上で、引退へと駒を進めていこうとしています。引退を決めた経営者は、自分が育てた会社をきれいに清算する必要があります。債務が残らない、自主的な廃業の場合、清算人として会社をたたんでいくのは、中小企業の多くでは経営者自身です。

本記事では、外部株主のいないオーナー企業が、自主的に廃業を進めるために清算人をどうするかについて考えてみます。

目次

清算人とは

自主廃業を決めた際の流れは大まかに以下のような流れです。

株主総会で会社を解散することを決めた後、取締役という地位はなくなります。あなたはもう会社の取締役ではありません。代わりに清算人という仕事が生まれます。清算人はこれまでの社長に代わって会社の決定権を持つことになります。社長を含めた元取締役が清算人になることも多いです。

自主廃業後の流れ

順序手続き手順
1
株主総会での解散決議、清算人の選任・登記株主総会を開催して、解散の議案を扱い、議決する。 解散決議に基づき、清算人を選任する。 選任された清算人を、登記手続きにより法務局に届け出る。
2行政への各種届け出解散決議と清算人の選任の届出、印紙の納付などを行政機関に提出する。
3解散時の財産目録と貸借対照表の作成と株主総会での承認決議清算人が、解散時点での会社の資産・負債を明確にした財産目録と貸借対照表を作成する。 株主総会で承認を得る。
4官報での解散公告、債権者への通知解散の公告を官報に掲載する。 債権者に対して、清算開始の通知をする。
5清算手続き(残余財産の確定と分配など)財産の調査、債権債務の精算、未払い負債の処理、残余財産の分配などを行う。
6清算の結了登記清算が完了したことを、登記手続きにより法務局に届け出る。

清算人は何をする?

清算人は、会社を終わらせることを目的に据えらる新社長のようなものです。会社解散の決議によって解散した法人の、まだ終わっていない業務を終了させることが主な責務です。会社法481条によって清算人の仕事には主に3つの職務が定められており、
①現務の結了
②債権の取立て及び債務の弁済
③残余財産の分配
と規定されています。

会社には様々な人が関わっていることが多く、いざ「廃業します」と発表すると、会社の状況によってはこじれることもあります。従業員を解雇するにあたって「不当解雇」として裁判になることもあるかもしれません。これまで関係性が良かった取引先も「債権が回収できなくなるのでは?」と不安になって急に取り立てをしてくることがあるかもしれません。また、廃業が裏切りと捉えられ、感情的なもつれから債権が簡単に回収できないことがあるかもしれません。

大きなトラブルのないオーナー会社の自主的廃業であれば、元代表取締役である社長がやることが最も簡単で進みやすいでしょう。しかし、時としてむつかしい仕事をこなすことが求められるため、弁護士をはじめその道のエキスパートに依頼することもあります。

弁護士などに依頼する理由には他にもあります。それは心のざわつきです。従業員を辞めてもらうことを伝える恐さ、開店のときはすごく嬉しかったあの時の思い出の象徴が失われる恐さなどです。第三者はビジネスとして感傷に浸ることなく進めるので、ある意味でスムーズです。

大きなトラブルのないオーナー会社の自主的廃業であれば、元代表取締役である社長がやることが最も簡単で進みやすいでしょう。

処分漏れには気を付けて

清算人を依頼する場合には、資産の処分漏れに気をつけましょう。「プロに任せたから大丈夫だろう」と思っていても、処分漏れの資産が後から出てくることもあります。もちろん単純ミスもゼロではないですが、預けた決算書や契約書、資産一覧表には載ってこない当人たちにしか分からない資産があることがあります。

そのことが判明しないまま清算決了登記を行ってしまった場合、通常は清算結了抹消したうえで、その資産を売り払ってそのお金を株主に再配分し、再度清算結了をすることになります。煩雑な手続きを繰り返すのはとても面倒なことです。

円満廃業に向けた清算人として

上記をまとめると、株主総会で解散の決議を経て会社の営業活動は終了し、財産の整理を行うための清算会社となります。解散によって取締役は退任し、取締役の代わりに清算人が清算業務に従事することになります。

清算人は以下の4つの方法のどれかから、小規模のオーナー企業が自主的な廃業をする場合は、一般的には元代表取締役が清算人として会社の最後までの仕事を全うすることが一般的です。

清算人を選任する主な方法

  • 定款に定められた人が清算人になる
  • 株主総会の決議で清算人を決める
  • 取締役がそのまま清算人になる
  • 裁判所が清算人を選任する

清算手続きにおいては、これまで慣れ親しんできた株主総会議事録や官庁への提出書類も名称や形式が異なってきます。代表取締役を清算人として読み替えることをしながら、ある程度の理解をしながら会社最後の仕事を進めていきましょう。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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