後継者は社内にいなくてもいい|第三者承継という選択肢が広げる事業の未来

事業承継というと、多くの経営者がまず「誰に継がせるか」を考えるのではないでしょうか。

そして、その候補として真っ先に浮かぶのは、子供や親族かもしれません。

しかし、価値観や働き方が大きく変化した現在、親族承継が前提ではない時代に入っています。

後継者がいないことは決して特別なことではなく、むしろ多くの企業が直面している経営課題のひとつです。

本記事では、第三者承継という選択肢に焦点を当て、承継の現状や考え方、具体的な方法について整理します。

目次

後継者がいないことは「問題」なのか

長年会社を経営してきた方から「後継者がいないのですが大丈夫でしょうか」とご相談を受けることは少なくありません。

経営者として責任感が強いほど、事業を次の世代へつなげられないことに不安や申し訳なさを感じるものです。

しかし、後継者がいないこと自体は決して特別なことではなく、承継のあり方が多様化する中で、従来の「身内が継ぐ」という前提を見直すタイミングに来ているともいえます。

子供に継がせない経営者も増えてきている

かつては、会社は子供が継ぐものという価値観が一般的でしたが、現在は子供が別のキャリアを選択することも自然な時代です。

経営には大きな責任とリスクが伴うため、親として無理に背負わせたくないと考える経営者も増えています。

このような傾向を理解し、事業を守る方法はひとつではないことや、第三者承継を含めた複数の選択肢を前提に考えることが重要です。

廃業理由の3割は後継者不足によるもの

中小企業庁の調査によると、廃業理由の約3割が後継者不足によるものとされています。

これは、経営状態が悪化した結果の廃業だけでなく、「引き継ぐ人がいないために続けられない」というケースが一定数存在することを示しています。

一方で、この数字は裏を返せば、事業そのものには価値があっても承継の選択肢を十分に検討しないまま廃業を選んでしまっている可能性があるともいえるでしょう。

近年では、第三者承継やM&Aといった方法により、親族以外に事業を引き継ぐケースも増えており、後継者問題は「解決できない課題」ではなく「選択肢を広げることで対応できる経営課題」と捉えられるようになっています。

参考:事業承継を知る|中小企業庁

同族承継はすでに多数派ではない

事業承継と聞くと、多くの方がまず思い浮かべるのは「子供や親族が会社を継ぐ」という形ではないでしょうか。

実際、これまで日本の中小企業では同族承継が中心的な方法として選ばれてきました。

しかし、近年の統計を見ると、その前提は大きく変わりつつあります。承継の形は多様化しており、必ずしも親族が後継者になるとは限らない時代に入っています。

事業承継の現状

中小企業庁の資料によると、経営者の就任経緯における同族承継の割合は近年32%程度まで低下しており、内部昇格やM&Aなどの割合が増加傾向にあります。

つまり、親族が継ぐケースは依然として有力な選択肢ではあるものの、すでに過半数ではなくなっているというのが実態です。

実務の現場でも、役員や従業員への承継、あるいは第三者への譲渡を選択する企業が増えており、承継の方法は確実に広がっています。

参考:親族内承継に関する現状分析と今後の検討の方向性について|中小企業庁

同族承継が難しくなってきている理由

同族承継の割合が低下している理由のひとつは、価値観の変化です。

かつては家業を継ぐことが当然とされていましたが、現在は個人の生き方やキャリアの選択が尊重される社会になりました。

子供が必ずしも経営者を志向するとは限らず、別の専門分野で活躍するケースも多く見られ、経営者としても、本人の意思を尊重したいと考える方が増えています。

もうひとつの要因は、キャリアの自由度が高まったことです。

終身雇用や家業中心の働き方から、転職や独立など多様な働き方が一般化し、後継者候補となる親族が必ずしも会社に関わっていないケースも珍しくありません。

第三者承継という選択肢も視野にいれましょう

後継者問題を考える際、「親族が継がなければならない」という固定観念に縛られてしまうケースは少なくありません。

しかし、事業承継の本質は血縁の有無ではなく、会社の価値を次の世代へどのように引き継ぐかという点にあります。

事業は血縁ではなく意思でつなぐものである

会社は創業者個人のものではありますが、同時に従業員や取引先、顧客など多くの関係者によって支えられています。

そのため、承継の際に最も重要なのは「誰が血縁者か」ではなく、「誰が理念や方向性を理解し、責任を持って事業を継続できるか」という点です。

経営とは、意思決定の連続であり、その意思を引き継げる人材であれば、必ずしも親族である必要はないにゃん

社員承継・外部招聘・M&Aと様々な選択が可能である

第三者承継と一口に言っても、その方法はひとつではなく、下記のように様々な選択が可能です。

  • 長年会社を支えてきた役員や従業員に経営を引き継ぐ社員承継
  • 外部から経営経験のある人材を招く外部招聘
  • 資本を含めて事業を引き継ぐM&A

いずれの方法においても重要なのは、会社の強みや課題を整理し、将来の方向性を明確にしたうえで最適な承継方法を検討することです。

子供には経営ではなく資産を遺すこともできる

親として「子供に何を残すか」を考えたとき、必ずしも会社をそのまま引き継がせることだけが選択肢ではありません。

事業を第三者に承継し、得られた資金を資産として残すことで、子供の人生の選択肢を広げることもひとつの方法です。

経営には大きな責任とリスクが伴うため、本人の意思に反して継がせることが必ずしも最善とは限りません。

会社の価値を適切な形で次につなぎながら、家族には資産という形で安心を残すという考え方は、合理的で現実的な選択といえるでしょう。

第三者承継の選択肢例

第三者承継を検討する際には、どのような方法で事業を引き継ぐのかを理解しておくことが重要です。

ここでは、第三者承継の代表的な方法について解説します。

株式譲渡による承継

株式譲渡は、現在の株主が保有している株式を第三者に譲渡することで経営権を移転する方法です。

会社の契約関係や許認可、従業員の雇用関係などを原則としてそのまま引き継ぐことができるため、実務上は比較的スムーズに承継を進めやすい手法とされています。

一方で、会社が抱えている債務や簿外リスクも含めて引き継ぐことになるため、事前のデューデリジェンス(財務・税務・法務の調査)が重要になります。

事業譲渡による承継

事業譲渡は、会社の中の特定の事業や資産・負債を個別に切り出して第三者に移転する方法です。

譲渡対象を選択できるため、不採算部門や不要な資産を切り離したうえで承継できる点が特徴です。

買い手にとっては、引き継ぐ範囲を明確にできるメリットがありますが、契約や雇用、許認可などを個別に移転する手続きが必要となるため、株式譲渡に比べて実務負担が大きくなる傾向があります。

その他の方法による承継

第三者承継には、株式譲渡や事業譲渡以外にも、以下のような方法があります。

  • 会社分割を活用して特定事業を新会社に移したうえで株式を譲渡する方法
  • 経営陣や従業員が出資して承継するMBO(マネジメント・バイアウト)
  • 外部資本を受け入れながら段階的に承継を進める方法

どの方法を選択する場合でも重要なのは、税務や法務、財務の観点を総合的に検討し、承継後の経営体制や事業の持続性を見据えて判断することです。

第三者承継は単なる手続きではなく、会社の将来像を描いたうえで設計するプロセスと言えるでしょう。

今日の一歩:後継者選びの基準を考えてみましょう

事業承継を考える際、多くの経営者が最初に「誰に継がせるか」という結論を急ぎがちですが、実際にはその前段階として「どのような人に託したいのか」という基準を整理することが重要です。

特に、第三者承継を視野に入れる場合、血縁関係にとらわれない分、より客観的な視点で後継者像を描けるでしょう。

まずは、自社にとって大切にしてきた価値観や経営理念を書き出してみることから始めてみることをおすすめします。

そのうえで、理念を理解し、長期的な視点で事業を成長させていける人物とはどのような人材なのかを考えてみましょう。

必ずしも現時点で完璧な経営能力を備えている必要はなく、誠実さや学習意欲、周囲と協働できる姿勢など、経営者としての資質を重視することが現実的です。

第三者承継についてよくある質問

最後に、第三者承継についてよくある質問を回答と共に紹介していきます。

第三者承継のメリットは何ですか?

第三者承継の最大のメリットは、事業の継続性を確保できることです。

後継者がいない場合でも、外部の意欲ある人材や企業に引き継ぐことで、従業員の雇用や取引関係を維持しながら事業を存続させられます。

また、外部の経営資源やノウハウが加わることで、事業の成長や新たな展開につながる可能性もあるでしょう。

第三者承継のデメリットは何ですか?

第三者承継のデメリットは、主に以下の通りです。

  • 買い手との条件調整や契約手続きに時間を要すること
  • 情報開示や調査対応など一定の負担が生じること
  • 承継後の経営方針によっては、従業員や取引先への影響が生じること
  • 適切な相手を見つけるまでに時間がかかること

第三者承継はメリットと留意点の両方を理解したうえで進めることが重要です。

親族内承継は減少しているのですか?

近年の統計では、親族内承継の割合は徐々に低下しており、従業員承継や第三者承継の割合が増加しています。

これは、価値観の多様化やキャリア選択の自由度が高まったこと、経営に求められる専門性が高まっていることなどが背景にあります。

ただし、親族内承継が選択されなくなったわけではなく、企業の状況によっては有効な方法のひとつであることに変わりはありません。

事業承継についてお気軽にご相談ください!

事業承継は単なる代表者の交代ではなく、会社の価値や理念を次の担い手へ引き継ぐ重要な経営判断のひとつです。

親族承継が難しくなっている背景には社会の構造変化があり、第三者承継は今や現実的で合理的な選択肢のひとつとなっています。

社員承継や外部招聘、M&Aなど方法は多様であり、自社にとって最適な形を選ぶことが重要です。

後継者がいないことを問題と捉えるのではなく、誰にどのように事業を託すのかという視点で考えることが、これからの経営者に求められる姿勢といえるでしょう。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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