中小企業診断士とは、中小企業が抱える悩みや経営に関する問題点を見つけ、解決策を提供する国家資格に基づき活動する職業です。具体的には、経営からマーケティング、人事、会計、法律など、多分野の専門知識や経験を活かして中小企業をサポートする仕事です。そして、経営を存続させるためだけではなく、「廃業」についても専門家として手続きのサポートが期待できます。
中小企業診断士が持つ資格は、経済産業省が所管する国家資格です。そのため、診断士は厳しい試験に合格し、一定の専門性と信頼性が保証されています。また、診断士のネットワークや情報収集能力を活かし、事業再生のための資金調達や事業承継など、様々な局面で支援が可能です。
中小企業診断士の仕事内容
廃業を考えている経営者にとって、中小企業診断士は、専門的な知識を持つ良きパートナーとなります。具体的にどんな支援に期待できるのか、下記にまとめました。
1.経営の現状分析
中小企業診断士は、会社の経営がどのような状況にあるのかを、冷静な判断情報を提供します。その情報提供にあたってはフレームワークやロジカルシンキングによる根拠も示してもらえるでしょう。第三者の冷静な視点を取り入れることで、廃業をするための優先テーマが見えてきます。
2.廃業プラン策定
廃業にあたっては、金融機関への借入返済は大きなテーマになってきます。長らくお付き合いしてきた金融機関に廃業の旨を伝えるタイミングも重要になってきます。中小企業診断士は、現在の借入状況を整理し、連帯保証や抵当権の抹消に関する金融機関との交渉、一時的な資金不足を生じさせないための資金計画など、廃業までの資金運用を多角的に支援していきます。
3.経営資源の再利用
経営者が後継者不在や高齢化などの理由で廃業を考えている場合、会社に残っている経営資源の再利用を支援するのも中小企業診断士の仕事です。中小企業診断士は、会社内に残っている設備、内装、機械、在庫など、他社が引き継いで運用できるものを洗っていきます。自分たちでは不要と思っているものでも、市場では価値のつくものも多く存在していることがあります。こういった経営資源の承継候補の選定、税務や法務面でのアドバイスも中小企業診断士の仕事です。
4.人事労務
労働問題や組織体制の改善に関する支援を行います。これにより、企業の生産性向上やコスト削減、労働環境の改善が可能になります。廃業を考えているとはいえ、完全に廃業するまで組織は動き続けます。それまでに生じる労働問題や組織体制は見逃しておくと思わぬ落とし穴に発展していきます。こういった改善支援をすることで、廃業までの道筋が見通せるようになります。
このように中小企業診断士は、廃業を考えている経営者に対して、これらの支援を通じて漠然と見えなくなりがちな課題を明らかにし、経営者が望む形の廃業の判断をサポートします。中小企業診断士に相談し、円満に廃業したほうが良いという判断を下した場合は、心置きなく会社をたたむことができるかもしれません。
中小企業診断士の資格とは
もしかしたら、あなた自身が、廃業後に中小企業診断士になりたいと思うこともあるでしょう。あなたの経験がとても生きる仕事でもあります。中小企業診断士の資格を取得するにはどのようにすればよいのでしょうか。
中小企業診断士は、中小企業の経営や事業展開に関する専門的知識やスキルを持ったプロフェッショナルです。この資格は、企業運営の幅広い分野での助言や支援を行うことができるように設計されています。
中小企業診断士の資格取得のプロセスは、国家試験である「中小企業診断士試験」に合格することが求められます。この試験は、総務省中小企業庁が主催し、年に1回実施されています。試験内容は、経営学、財務会計、税務、労務、法律、情報技術(IT)、マーケティングなどの幅広い分野が含まれており、合格率は非常に低いとされています。
資格取得のためには、一定の学習期間と準備が必要で、多くの受験生は、専門学校や通信講座を利用して学習を進めていきます。また、実務経験を持つことが推奨されており、実務経験がある受験生の方が、より深い理解や応用力を持っているとされています。中小企業を経営したことがある人は、経営に関する実践的な知識と理解を持っています。あなたの持つ社長としての実務経験は、この点でとても役に立つでしょう。試験勉強において理論だけでなく実践面での理解を深める助けにもなります。自社や他社の経験に基づく事例を理解しやすくなるのもポイントです。
中小企業診断士の主な働き方
中小企業診断士の主な仕事は、中小企業の経営者や関係者に対する経営コンサルティングです。経営戦略の策定や改善、財務分析、労務管理の最適化、情報システムの導入、マーケティング戦略の構築など、幅広い分野で支援を行います。また、事業承継やM&A、事業再生などの業務も担当することがあります。
中小企業診断士は、一般的には独立して開業することが多いですが、コンサルティング会社や金融機関、中小企業支援機関等で働くこともあります。また、中小企業診断士の資格は、経営コンサルタントやビジネスマネージャーとしてのキャリアを築くためのステップにもなります。資格を持つことで、専門的知識と実践力が認められ、信頼性が高まるため、クライアントからの信頼も得やすくなります。
中小企業診断士は、地域や業種を問わず、様々な中小企業の経営課題を解決するための重要な役割を担っています。特に、地域経済や産業の振興に貢献することが期待されており、国や地方自治体などの政策にも関与することがあります。
また、中小企業診断士は、自らの専門分野や知識を活かして、研修やセミナーを開催し、他の経営者や関係者に情報提供や教育を行うこともあります。これにより、中小企業の経営者や従業員のスキル向上を促し、企業全体の競争力を向上させることができます。このセミナーの話では、あなたの会社経営における経験は、非常に現実味のあるエピソードとして価値のあるものとなります。
中小企業診断士には独占業務がない分、個人の力量が試される
中小企業診断士は、税理士や社会保険労務士といった他の士業とは違い、独占業務を持ちません。この資格がないとできない業務はないのです。裏を返せば、あなたの力量次第で大きな成果を出すことができます。これまで経営者として数多くの修羅場をくぐり抜けてきた経験は、ただ知識を持っている人ととは一線を画するはずです。
日本の多くの中小企業は、人材不足、雇用問題、労働問題、生産力の低下、経営悪化など多岐に渡る問題を抱えています。必要としている人は多く、経営コンサルタントが果たせる役割は小さくありません。廃業においても中小企業診断士の力を借りることができるポイントは多くあります。
このように、中小企業診断士は、中小企業の経営や事業展開に関する専門的知識やスキルを持ったプロフェッショナルであり、様々な分野で活躍が期待されています。今も、これからも必要とされる重要な職業であることは間違いありません。
廃業の分野でも力を発揮する中小企業診断士
中小企業診断士の資格は、国家資格であり、ビジネスにおける豊富な知識とスキルが求められます。中小企業の経営者や関係者からの信頼も厚く、地域や業界の発展に貢献できるやりがいのある職業です。
経営者の中でみても、こういったアカデミックに豊富な知識を持っている人は少ないものです。「廃業」については私情が入り込むため、客観的に状況把握ができなくなることが多々あります。専門家との会話のキャッチボールで得られる気づき・発見で、新たな一歩が導けることでしょう。