大廃業時代とは
「大廃業時代」とは、2025年頃には日本の中小企業のうち約127万社が廃業を迎えると予測されている問題です。中小企業庁が毎年発表している「中小企業白書」を読むと、中小企業を取り巻く現状が良く分かります。中小企業庁の調査によると、2025年には70歳を超える中小企業の経営者は約245万人。そのうち約半数の127万人において、後継者が未定とされています。この127万社が、廃業予備軍となります。
その背景は、経営者の高齢化と後継者の不在です。昨今のデジタル化やスマートフォンの浸透によって、ビジネスのあり方が大きく変わりました。ITを活用した企業が他業界から新規参入し、業界の勢力図が一気に変わる事例も増えています。従来型のビジネスのやり方を変革できない場合は、後継者がなかなか見つからないのが現実です。そうこうしているうちに、1995年には47歳の人数が全体のピークであった中小企業の経営者が、2015年には66歳の人数がピークとなってしまっています。そして2025年ごろに、多くの企業が廃業という選択肢を取らざるを得ない状況になることが懸念されています。
2022年版「中小企業白書」では、(株)東京商工リサーチの「休廃業・解散企業」動向調査が掲載されています。これによると、2021 年の休廃業・解散件数は4万4,377件で、前年比10.7%減となってはいますが、長期的にみると増加傾向であることが分かります。そして、前述の通り、2025年ごろには一気に増えることが予想されています。ここには、基本的に債務超過による倒産が含まれておらず、倒産も含めるとその数は2025年には相当な数になるでしょう。
2021年で数値が下がっているのは、新型コロナウィルス蔓延にともなう経済状況の悪化に対し、政府による資金繰り支援などの各種支援策おかげという見方もできるかもしれません。
廃業率が高いのは飲食・宿泊サービス業だが
中小企業白書によれば、廃業率は「宿泊業, 飲食サービス業」が最も高く、「生活関連サービス業, 娯楽業」、「金融業, 保険業」と続いています。ただし、開業率と廃業率が共に高く、事業所の入れ替わりが盛んな業種は、「宿泊業, 飲食サービス業」、「生活関連サービス業, 娯楽業」です。入れ替わりが盛んではないのに廃業率が高いものは、「金融業・保険業」「小売業」、続いて「電気・ガス・熱供給・水道業」ということになります。開業率に比べ廃業率が高い業種はある程度存在するということが分かります。
事業承継か廃業か
ただ、どの業種・企業でも共通していると思われることは、抱える課題は異なれど、経営者の高齢化に直面しているということ。とにかく事業変革をして強い利益体質を作り、多くの個人や企業がその事業承継をしたいと思える状態にしなくてはなりません。もしくは、資産があるうちに早めに廃業の決断をして、倒産する前に決着をつける必要があります。日本経済を支えてきた中小企業はいま、分岐点に立たされています。