中小企業の社長が引退を考えるとき、今の会社を社員に継がせるかは悩むところです。「継いだ後に後継者は果たしてやっていけるのか」という悩みもあります。本来、後継者選びや事業承継は時間をかけてやるべきこと。残り時間が少なくなり、いよいよ決断をしないといけないときに、経営者たちはどのように動いたのでしょうか。
3人の人格が一つになれば良いけれど…
「Aさんの営業力、Bさんの緻密さ、Cさんの技術力が一つになれば社長にしてもよい」といった話を聞くことがあります。現実的にそのようなことは起こりえません。現社長と同じレベルのスーパーマンはいないものと認識しておきましょう。特に創業社長と同じスペックの人はいません。仮に世の中にいたとしても、自身で起業したりしていることが多いのが実情です。さらに、そのような人でないと成り立たない場合は、事業の運営方法自体に改善の余地がある可能性もあります。もっと前からやっておけばよかった…と後悔する前に、手を打っておきましょう。
社長が参加する会合に幹部を連れて行っているか
社長と同じ体験をできるだけ増やすことで、中堅社員の視座を高めることができているでしょうか。例えば、社長が参加する会合に幹部を連れていったりしているでしょうか。社員は普段は目の前のビジネスに没頭して精一杯やってくれているはずです。しかし、社長はこれまでもその先を考えてきたことでしょう。先のことを考えている人たちの環境に社員を連れていくことで、幹部社員や中堅社員の考え方に変化が現れます。
社長に連れて行ってもらうことで。「自分に目をかけてくれているんだ」とモチベーションも上がり、社員の頑張り度合いも変わることがよくあります。
社運を賭けたプロジェクトを任せたことがあるか
企業経営には、厳しいときでもやり抜く胆力が求められます。社運を賭けたプロジェクトを、後継としたい社員に任せたことはありますか?任せた結果はどうでしたか?失敗したとしても、社員はその結果から学んでいますか?
また、大事なプロジェクトを任せてみた際に、状況を見るうちに耐えかねて社長のあなた自身が介入しすぎたりしていませんか?大事なプロジェクトを社員に任せる場合、あなた自身にも忍耐力が問われます。これは会社を引き継いだあとにも必要とされることで、あなた自身が経営から引退したときに、しっかりと見守るスタンスが取れるのかということも試されます。
後継者がバックオフィスに対する理解があるか
中小企業の社長の悩みの上位に必ずと言っていいほどランクインされるのが人事などのバックオフィス系の課題です。営業成績の良い社員を任せようとしても、その社員がバックオフィスに対する理解が浅かったり、バックオフィスを軽視したりしているようであれば、企業経営は任せられないかもしれません。
特に社長のあなた自身も、採用や人事に関して頭を悩ませた経験はあるでしょう。企業の縁の下の力持ちであるバックオフィス業務の大切さを理解し、人事・総務・経理といった人たちに協力してもらえる人が後継者に求められる資質の一つでもあります。
自社ビジネスの分野に没頭できる人材か
社長のあなたは自社ビジネスに対して並々ならぬ情熱を持っていると思います。後継者の候補となる社員は、自社ビジネスに対して情熱を持っているでしょうか。社長に抜擢するということは、当然ながら当該社員(新社長)に対する報酬も増えることになります。そのこと自体は悪くありません。責任ある立場はそれなりの報酬があってしかるべきです。ただし、お金で動く人は、お金で出ていく人でもあります。この点を考えて、後継者は自社のビジネスに心から没頭できる人であるかを見ておきましょう。