「廃業されたら困る」と言っていたお客さんのその後

円満廃業ドットコム:「廃業されたら困る」と言っていたお客さんのその後

「自分の信用は会社の信用」と考えて経営を頑張ってきた中小企業の社長は多いと思います。「もし自分の会社がなくなったらお客さまにも迷惑をかけてしまう…」という考えることは、これまで会社を代表してきた事業主にとってみれば普通のことかもしれません。しかし、そのような苦しみをもって廃業したケースでも、後日談を聞くと、それほど心配する必要はなかったのだと気づかされることも多いものです。

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車のサプライヤー企業のケース

東海地方で車のパーツに使われる部品を作っていた服部圭一さん(仮名)は、廃業すべきかについて悩んでいました。従業員もみな歳をとり、跡取りもいない状況です。業績も横ばいから、じりじりと下がり始めました。潮時ととらえて廃業しようと考えましたが、どうしてもお客さまのことが気になっていました。

「ウチはあなたの会社のパーツがあるからこそ」とかつて言われたことが頭から離れません。「自分の会社をたたんだらお客さまに迷惑をかけないだろうか」と悩んでいました。それでも背に腹は代えられず、最終的に廃業を決断します。

果たして服部さんのお客さまである元受け偉業はどうなったのでしょうか。実際は、大きな問題なく回っていたのです。廃業の連絡を受けたその会社は、すぐに供給元を切り替え、通常運転をしていたことが分かりました。「これで良かったのだと思いつつ、あの時悩んでいたことを思い返すと微妙な気持ちになりました」と服部さんは言います。

以前から複数企業に発注していた企業も

半導体製造装置の部品を製造していた清水史郎さん(仮名)のケースでは、「ウチがいつでも切られる状態」でした。コスト削減のためにすでに複数の会社に発注していたのです。「少しずつ発注量が減っていたのは、生産が減ったわけではなく、他社へ流れていたのだとあとで気付きました」と清水さんは振り返ります。

清水さんの会社の提示する金額を他社に提示され、それよりも安い金額で請け負う業者を募っていた可能性もあります。「いまとなってはもうどうでもいいですし、それを確認しようとも思いません」(清水さん)。

相手を考えすぎて廃業の判断を間違えないように

服部さんや清水さんのお話を伺って、「中小企業の社長は気が利く半面、自分で抱え込んでしまっていることもあるのかもしれないと」思いました。常日頃から「自分が辞めたら会社が回らなくなる」と考えがちなのも同じかもしれません。「あの社員が辞めたら大変なことになる」と言うのも同様でしょう。

実際はどうでしょうか。辞められたら困ると思っていた社員が去っても、そのうち会社回るようになったという経験はありませんか?お客さまを気にしすぎる必要はないかもしれません。ただし、お客さまとしても、これまでそれなりの対応をしてきたのだと思います。

清水さんの場合も、いつ切られてもよい中、取引は継続してくれていたと解釈することもできます。仕事がない時期も仕事を作ってくれたこともあったかもしれません。その点への感謝の気持ちをもって、取引を終えるのがよいのではないでしょうか。

早めの廃業は自分のためであったり、倒産前に次のスタートを後押ししたい従業員のためであったりするのです。相手を考えすぎて廃業の判断を間違えないようにしたいものです。

 エマニャン

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円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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