事業を行っていなければ廃業届を出さなくてもよい?
事業を廃業するにあたって、事業主がやるべきことは、きちんと清算して廃業届を出すことです。しかし、すでに事業として営業活動を行っておらず、実態が乏しくなっている場合もあります。廃業を考える際に、すでに売り上げがない、従業員もいないといった理由で、「会社をそのままにしておいてもいいのではないか」と考えることもあるでしょう。
廃業届を出していないこと自体には罰則はありません。しかし、事業を辞めたつもりでいても、廃業届を提出しないままで確定申告を行わない場合はリスクがあります。例えば株式会社の場合、売上や利益がゼロでも税金はかかります。
利益がまったくない場合、課税されない税金もあります。法人税、法人事業税・法人住民税所得割(利益に比例する部分)等がその対象です。ところが、法人住民税均等割(固定の税金)はたとえ売り上げがなくても税金を納めなければなりません。
法人住民税均等割とは
法人住民税均等割は、事業所などが所在することで課税されるものです。このため、事業が赤字でも税金を支払う義務があります。都道府県民税では法人の資本金等の額で、市町村民税では法人の資本金等の額と従業者数で払う税金の額が分けられています。この納税の義務に違反しているということで、ペナルティを課せられることになります。
滞納した場合は延滞金がかかり、滞納を続けるとその金額は膨らみ続けることになります。法人住民税均等割を支払わないことは、法人の所得にかかる税金である法人税に反するため、実質廃業しているからといって、廃業届を出さずに法人税を納めなくてよいということにはなりません。
廃業届が出ていないとどのようになるのか
廃業届が出ていない場合、税務署は事業を継続しているものと判断します。この登録が残っている以上、毎年税務署類き、何もしていない場合は無申告だと疑われてしまいます。税務署類が届き続けることで初めてそのリスクに気づく事業主もいます。
廃業届ではなく休眠届を出す方法もある
いまは事業ができないが将来的には再開することを考えている場合は、休眠届(休業届)を行いましょう。廃業届は、会社の解散登記をし、清算手続きを行う手続きです。清算手続きを経て正式に会社は法人として消滅することになります。
一方、休眠の場合には、会社としては残り続けます。会社は存続させたまま、事業活動を停止する手続きです。「異動届出書」に休眠する旨を記載して提出することで休眠届が完了します。会社を休眠状態にすることで、ふたたび事業を再開する際の手続きが簡単になります。
ただし、役員の任期が満了した場合は、休眠会社であっても変更登記が必要です。12年間登記せずに放置していれば、みなし解散により強制的に解散の扱いになってしまう可能性があります。株式会社には取締役といった役員がいますが、役員の任期は最長でも10年です。このため、10年以上にわたって登記の変更が行われないということは通常ではありえないことになります。
このように、廃業届も休眠届も出さない場合は、なんらかのデメリットがあると考えておきましょう。