廃業による引退、事業承継による引退、倒産による引退

円満廃業ドットコム:廃業による引退、事業承継による引退、倒産による引退

中小企業の経営者が「引退」という言葉を使う際、その会社がその後どうなっているかによって、引退という言葉の持つニュアンスが異なることがあります。「事業の前線に立つことからは引く」という意味での引退をした結果、その会社をどうするかによって、同じ「引退」でも大きく意味が違うのです。

引退と同時に語られる、廃業、倒産、事業承継といったキーワードをもとに、引退の持つ意味および引退と廃業の違いや、引退と倒産の違いをひも解いてみます。

目次

経営者を引退すると同時に廃業する場合

1つ目は、経営者を引退すると同時に、事業を清算する(廃業する)ケースです。「会社をたたんで引退する」という言い方の場合はそこに廃業の意味が含まれています。

なお、廃業と倒産・破産は異なるものです。事業を整理した場合、債務が残らない場合は廃業です。債務が残るなら破産(倒産)です。廃業はあくまでも主体的な事業整理です。詳しくは、「廃業と破産の違い」にて解説します。

なお、「事業承継をしない」と判断した場合には、「事業承継をしたくてもできなかった」場合も多く含まれています。そこには根深い問題があります。

日本経済を支えてきたのは中小企業。日本の全企業数のうち、実に99.7%を占めています。その中小企業においては、近年、経営者の高齢化が進行する一方で、後継者の確保がますます困難になっています。中小企業の後継者不在問題は、国も無視できないほど深刻で、中小企業庁は事業承継のガイドラインをはじめとする情報発信や各種対策をおこなっています。こういった後継者不足による廃業の増加は、日本における貴重な雇用機会や技術への影響も懸念されています。

また、事業承継に失敗して紛争が生じたり、会社の業績が悪化したりしてしまうケースもあるため、スムーズな事業承継の大切さが叫ばれているのです。

日本政策金融公庫による「経営者の引退と廃業に関するアンケート」(2019年)では、「後継者を探すことなく事業をやめた」が 93.4%と高い割合を占めていました。後継者を探すことなく廃業した理由は、「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていなかった」が 57.2%と最も多く、次いで「事業に将来性がなかった」が 23.1%となっていました。

なお、「子どもがいなかった」「子どもに継ぐ意思がなかった」「適当な後継者が見つからなかった」は合計13.7%です。もし事業承継にかけられる時間がもう少しあれば、または事業承継を適切なところに相談できていれば、結果が異なっていた可能性も否定できません。

「引退」「廃業」という2つの言葉が並んだとき、そこには中小企業経営者のさまざまな思いがあることでしょう。

経営者を引退して事業承継を行う場合

2つ目は経営者として引退したあと、経営資源を後継者に引き継ぐ事業継承のケースです。「うまく事業承継できたケース」と捉えることも引退後は株主や相談役として会社に残ることもあります。

「後継者に渡して引退した」という場合は、自分が育ててきた会社をうまく後継者に渡すことができたという安堵感のニュアンスが含まれていることが多々あります。

倒産がきっかけで仕事から引退する場合

会社が倒産した場合、その会社の経営者としては強制的に退場せざるを得ません。これをきっかけに、再起をかけるのではなく企業経営から引退することもあります。事業資産よりも負債が多くなってしまい、会社を清算しても債務が残る場合は基本的に倒産です。会社の清算(廃業)を決断するタイミングを誤ると、ずるずると業績が下がって倒産になってしまうことがあります。もっとも避けたい引退のパターンです。

このように、引退にはさまざまな形があります。引退して廃業するケースの場合、事業承継をさぐったり後継者を探したりせずに決めてしまっていることも多く見受けられます。
倒産のリスクを避け、事業承継または前向きな廃業ができるように、日ごろから引き際を考えておきましょう。

 エマニャン

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円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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