スマートフォンの浸透などによるテクノロジーの進化は、保険業界にも大きなインパクトを与えました。いわゆるダイレクト型の保険商品によって、従来型の人による営業がなくなり、代理店の存在感が薄れてきています。それによって、小さな保険代理店の生き残りが難しくなってきました。本記事では、保険業界における廃業の現実について、中小企業経営者の方々にわかりやすく解説します。
新規参入の障壁が高い業界だったが…
保険業界は、法律や規制の厳しい業界であり、保険商品の売上高は長期的なものが多いため、新規参入企業が少なく、既存企業が優勢な市場構造になっていました。また、顧客の信頼が必要な業界であるため、顧客満足度や信用力が重要なポイントとなっています。
しかし、最近では保険業界も、他の業界同様に激しい競争が加速し、業界全体の売上高も減少傾向にあります。大手の保険会社も、販売員のコストを大幅に減らし、子会社として別法人を立ててダイレクト型の商品を増やしています。つまり、スマホ一つで見積から契約までを一気にやってしまおうというものです。
保険業界の市場動向としては、保険商品の種類が増え、その中から自社に合った商品を選び、競合優位性を持つことが求められますが、その多くがインターネットを活用したデジタル空間で完結できるようになりました。
顧客の声を収集し、改善に繋げるための取り組みや、顧客向けのセミナーや講座など、顧客満足度向上につながる施策もまた、SNSやオンラインセミナーでできるようになり、人手を介する余地がどんどん減ってきています。
専門知識を持つ人材が不足
また、保険業界には、法律や規制に関する知識が求められます。保険業界における法律や規制に関する最新情報を収集し、適切な業務を行うことが必要保険業界は、顧客情報を取り扱う業界であり、情報漏洩や個人情報保護法違反などの問題があるため、情報管理についても重要です。中小企業経営者は、情報管理の強化や情報漏洩対策を実施し、顧客からの信頼を得ることが必要です。
人材不足の問題はそのようなエキスパートが減っていることに加え、若年層の保険商品への関心が低いことや、長時間労働や残業代未払いなど、労働環境の悪さが原因とされているという見方もあります。
保険商品のオンライン販売や、保険金の支払いなどのデジタル化が進み、AIやロボット技術を活用したサービスの提供も進んでおり、保険会社や代理店でテクノロジー活用ができないところはビジネスが厳しくなってきています。
保険代理業の会社が円満に廃業するには
上記のような中、保険の代理販売業を営む中小企業や個人の中で、廃業を選択するケースがちらほら見られます。基本的に仕入れがない業態であるため、不良在庫が積みあがることはありませんが、じりじりと資産を減らす前に円満に廃業しようという考えが出てきても不思議ではありません。
保険代理業の会社が円満に廃業するには、以下のような手順を踏むことが重要です。
1. 廃業の決定を正式に発表する
廃業の決定が下されたら、できるだけ早く、社員や取引先に対して正式に発表することが大切です。社員や取引先に迷惑をかけないよう、できるだけ円滑な手続きを進める必要があります。
2. 社員との協議
社員との協議を行い、雇用保護措置や退職金などの手当を提示することが重要です。社員の利益や権利を守りつつ、円滑な手続きを進めることが求められます。
3. 契約者への対応
保険契約者への対応も重要です。販売代理であるため、契約解除や保険金の払い戻しというケースはないでしょう。しかし、何かあったときの連絡先など、スムーズな引継ぎが必要です。正確かつ適切な情報を提供することが求められます。契約者に不安を与えないよう、丁寧かつ迅速に対応することが大切です。
4. 法的手続きの完了
廃業に伴う法的手続きを完了し、関係機関に届け出を行うことが必要です。また、廃業による負債の処理など、法的な問題についても適切に対応することが求められます。
以上のように、保険業界の企業が円満に廃業するためには、社員や契約者に対する配慮や、法的手続きの適切な処理が必要です。廃業する前に、十分な検討を行い、社員や契約者に迷惑をかけずに廃業を進めることが求められます。