会社の終わりとして廃業ではなく破産になってしまうことは他人に迷惑がかかるため最も避けたいところ。それでも破産を選択せざるを得ないときがあります。中小企業の破産の手続きを調べてみると、少額管財事件という言葉が出てきます。本記事では中小企業の倒産や自己破産で関係する、少額管財を紹介します。
少額管財は中小企業や個人向け
管財事件とは、破産や再生手続きにおいて、破産管財人や再生管財人が債務者の財産を管理・処分し、債権者の権利を守るための手続きです。つまり、債務者が破産や再生手続きを行う場合には、管財事件が始まり、財産管理人が任命されます。
管財事件では、財産管理人が債務者の財産を調査し、有効な債権を確認した上で、財産を処分し、債権者に債務を返済することが求められます。また、財産管理人は、債務者の財産を保全し、債権者の権利を守るため、必要な措置を講じることができます。
この管財事件には、管財事件・少額管財事件・同時廃止事件の3種類があります。
管財事件
財産管理人による財産管理手続きであり、破産管財人や再生管財人が行うことがあります。財産管理人は、破産や再生手続きに伴い、債務者の財産を管理・処分し、債権者の権利を守ることが目的です。財産管理人は、債務者の財産を調査し、有効な債権を確認した上で、財産を処分し、債権者に債務を返済することが求められます。
少額管財事件
管財事件のうち、破産手続きに伴う財産管理手続きのうち、債務総額が比較的少額の場合に適用されます。この制度は、小規模な破産手続きに対応することを目的としており、財産管理人が任命されることにより、手続きの迅速化・簡素化を図ることができます。
同時廃止事件
破産手続きに伴う財産管理手続きであり、債務者の財産が債務超過である場合に適用されます。この手続きでは、債務者の財産が処分され、債権者に対する債務の返済が行われます。同時廃止事件は、債務超過状態にある債務者に対し、早期に債務整理を行うことができるようにすることが目的です。
なぜ少額管財が必要なのか
管財事件のでは,破産手続をすすめていくための最低限の実費等や破産管財人の報酬が必要です。これを「引継予納金」と呼び,申立人の側で用意しておく必要があります。
このお金が払えない場合のために、少額管財というものが創設されました。中小企業や個人にとっても払いやすい金額になっています。
もし、引継ぎ予納金が払えないということで、「同時廃止事件」で簡単に処理してしまったらどのようなことが起こるでしょうか?
破産者側や破産した法人側で持っている資産をしっかりと把握する人がいません。資産隠しをされてしまう可能性があります。さらに同時廃止で破産手続が終了してしまうと、配当できる財産が本当に無かったことの証明もできません。債権者にとっての不利益がないようにするための仕組みです。
前述したように、破産手続きは債権者の権利を保護することが目的です。同時廃止事件を隠れ蓑に、資産隠しをされないようにするためという側面もあります。
少額管財の注意点
少額管財事件の注意点を以下に記載します。
1.複雑な破産事件では利用できない
少額管財は、通常の管財事件(特定管財)における手続きを簡略化する制度です。
そのため、債権者が多数の複雑な場合には利用できません。管轄裁判所の運用方針によっても変わるため、弁護士に確認しましょう。
2.少額管財を運用していない裁判所がある
少額管財の運用は、申立先の裁判所によって異なります。
大都市圏では基本的に運用されています。それ以外の地方裁判所では、少額管財の運用を行っていないところもあります。
申立先が少額管財の運用を行っていない場合は、自動的に特定管財となってしまうため、注意が必要です。
3.弁護士による代理人申し立てが必須
少額管財による手続きの簡略化を前提として、弁護士による代理人申し立てが必要です。
破産管財人が対応を開始する前に、代理人弁護士がある程度の交通整理を行うことによって、少額管財による簡略化された手続きが可能になるためです。つまり、弁護士費用の考慮も必要です。
弁護士に依頼する場合、弁護士費用がかかりますが、少額管財によって予納金が抑えられることや、手続きの手間などを考慮すると、依頼するメリットが大きく上回ると考えられます。
まとめ
このように少額管財は破産手続の方法として有効に活用できるものです。しかし、注意点を考慮すると、実際に活用できるかどうかは判断が難しいかもしれません。自分だけで判断するよりも弁護士に相談しましょう。