中小企業の社長は、自分の会社をたたんで廃業したあと、どのような生活を送っているのでしょうか。廃業したあと、セカンドキャリアとして再就職をしたり、ボランティアをしたりと考える人も多いでしょう。そこで気づかされるのは、すでに社長ではなくなった自分の社会的価値です。はじめはいろいろと困難に当たるでしょう。とはいえ廃業は、自分の価値を考え直す良いきっかけにもなります。
意外と価値がない自分に気づかされる
廃業・引退したあなたは、いまや社長ではありません。部下もいなければ、取引先もいません。それなりにやってきたという自信はあれど、まったく異なる環境で同じように認めてくれることはまずないと思っていいでしょう。あなたの経験を捉えなおし、価値を理解してもらえる場所に身を置いたり、初心に立ち返って若い人と同じ目線に立ったりする必要があります。
一般的に転職する人たちは、自分のスキルの棚卸をおこないます。自分が何をしてきたかを考え、やってきたことから自分の得意なことを整理します。社長としてやってきたあなたにその経験はないかもしれません。しかし、採用時にその人の価値や人となりを見てきたと思います。今度はあなたが判断されることもあるでしょう。
事業運営の経験はあなたの価値
物事を決める判断力、会社を発展させるためにやり切る胆力、社員の生活を守る懐の広さなど、事業運営の経験から来る価値はたくさんあります。元社長としての権威にすがらず、周りから求められるような行動を心がけることで、あなたの経験はとても大きな力を発揮します。中小企業におけるアドバイザーとして、顧客を連れてきたり、相談に乗ったり、時には自分で汗をかいて実務をやることもできるでしょう。
かつての成功者が再び成功するとは限らない
一度引退した経営者の中には、立ち上げた会社を上場させたり、他社へ売却したりして、大きなお金を手にした人もいます。そのお金を使ってあらたな会社を立ち上げることもあるでしょう。そして成功させて、いわゆる「連続起業家」の栄えある称号を手にしている人たちがいます。しかし、同時に2回目の事業で大失敗する人たちも数多くいます。
事業の成功は、本人の能力によるだけでなく、時流に乗ることができたかや、当時の社員の能力など、外的要因もからんでいます。理由がわからない「運」ということもあるでしょう。それらを引き寄せるのも本人の能力と考えることもできますが、1回目の経験を過信することは危険です。
実際に2回目で自己破産ギリギリまで言ったケースも私たちは見てきました。1回目の成功で「自分は修羅場をくぐってきたんだ。2回目も成功するだろう」と過去の経験から安易に考えないようにしたいものです。
肩書が通用しない環境で自分の価値の見直しを
これから日本にやってくる超高齢化社会と、それにともなう慢性的な人材不足は多くの中小企業での課題になります。そのような環境においては、あなたの経験はきっと役に立つはずです。
日本でも雇用の流動化が少しずつ進んできました。自分の腕1つで生きていくフリーランスも増え、肩書が通用しない環境になりつつあります。そして人は歳を経るにつれて「他者への貢献」に高い価値を見出すといわれています。一度経営を引退したあなたは、自分が社会に何を与えられるかがわかると人生も大きく変わるのではないでしょうか。