会社の廃業の理由としてよく挙げられるのが、赤字続きなどの業績不振です。
しかし、実は黒字のまま廃業している企業が多いことはあまり知られていないかもしれません。
「黒字でも廃業」と言われて思い浮かぶのはいわゆる「黒字倒産」。これはキャッシュフローが足りないといった、資金繰りの失敗による「倒産」です。これは廃業ではありません。
廃業とは、意思をもって事業を清算することであり、黒字でありながらも意思を持って会社をたたんだケースが6割近いという事実があるのです。
清算した企業の約6割が黒字
休廃業・解散した企業の業績を見てみると、2014年以降、約6割の企業が黒字です。その中でも利益率が5%以上の高利益率の企業が、これらの企業全体の4分の1を占めています。ここからは、余力のあるうちに決断している企業が一定数あることが想像できます。
なお、2021年、2022年に清算した企業を見ると、新型コロナウィルスの影響を受け黒字の割合は50%代に下がっていますが、依然として多くの企業が黒字の状態で廃業をしていることは事実です。
黒字のうちに決断できている経営者は、早い段階から自社の業績の傾向をつかみ、業界の先を考え、自分が引退したときに渡せるかを考えてきたケースもあれば、と突如として状況を察し 、即座に決断したケースもあります。
このような経営者たちに共通しているのは、コストカットや債務整理をやっても利益を出せなくなる前に行動しているという点です。
廃業の決断も経営者の責務
自分で立ち上げた会社は自分の子どものようなものと考える創業経営者は少なくありません。自分が育て上げた会社を清算するのは、断腸の思いでしょう。
しかし、廃業は経営者としての重要な責務でもあります。適切な時期に適切な方法で会社をたたむ処理をしないと、本人や家族はおろか従業員や取引先、社会に迷惑をかけることになります。
廃業に対する適切な決断はあなたも次の人生のスタートを切れるという前向きな側面もあります。
会社を清算するのは悪なのか
会社を清算するということを「悪」だという声があります。そのような意見をよく聞いてみると「雇用をなくしてしまう」「日本の大切な技術やノウハウが途切れてしまう」といったものです。
この意見は、経営者にぶつけられるものではなく、国に向けられたものではないかと、私たちは考えています。この意見をそのまま受け入れ、会社が資産を減らしながら業績が悪化するようないばらの道をあなたが歩んでも、誰も助けてはくれません。
周囲の雑音に惑わされることなく、あなたの内なる声に基づいた選択をするべきです。
手元資金を残して会社をたたむ「勝ち組廃業」
会社としては廃業よりも前に事業継承を考えるのが通常でしょう。しかし、それが難しかった場合、手元資金を残して会社をたたむには、ずるずるといたずらに時間を費やしてはいけません。早く決断をして、手元に資金を残し、次のスタートへ備える廃業の勝ち組になりましょう。
経営者の引退後の懸念事項の上位に必ず入るのが「自身の収入の減少」。収入は減少しても生活できるように資金を残すことが大切です。賢い廃業のためには早い決断が重要です。
廃業は誰に相談するの?
もしあなたが、廃業に関して相談したいと思った場合は、公認会計士や税理士に相談してみてください。事業の継続に関しての判断や、廃業するまでの手順や計画を一緒に考えてもらえるでしょう。実際に廃業に向けて税務面のアドバイスも受けられます。あなたが会社をどのようにたたんでいきたいかという意思をもって聞いてみてください。
金融機関も相談先の一つです。事業の引継ぎ先を探してきてくれるケースもあります。また、借入金の返済方法の相談については弁護士も頼りになります。
あなたの状況に応じて、まずは相談から始めてみてはいかがでしょうか。勝ち組の廃業に向けた一歩を踏み出してみてください。