法人が廃業を検討している際に気づくことの一つが税金の滞納です。「そういえば税金・社会保険料の滞納があるな」とそのタイミングで気づく会社は意外と多いようです。当記事では、税金を滞納したまま法人の廃業をしたらどうなるのかを考えてみます。
法人が廃業するならば税金の滞納は解決しておくべき
先に結論を述べると、法人が廃業するならば税金の滞納は解決しておくべきです。税金にも多くの種類があり、すべて支払えているか不安な場合は、顧問税理士に相談してみましょう。特に預り金としての性格を有する消費税や源泉所得税、社会保険の滞納が溜まってしまっている会社が多いように思えます。
いま手元にある税金や社会保険料の督促状を払ったとしても、まだ残額が残っていることがあることにも注意です。そして、滞納した税金・社会保険料には延滞税などのいわゆる利息が加算されます。これは、納付後に税務署や社会保険事務所が滞納期間から割り出して納付書が送られてくるものです。
現時点の税金・社会保険料の滞納額がいくらあるのかの目録を出してもらうように依頼をして明確にするとよいでしょう。これらを払わずに、退職金や資本の払戻金をもらってしまうと後日個人に税金の取り立てが及ぶことになります。
税務署や自治体から「納税証明書(未納の税額がないことの証明)」を入手する方法もあるにゃん
「税金の督促が来ても、その会社は廃業してこの世にもうないのだから、払えない。つまり払わなくてよい」ということにはなりません。確かに、残余財産の分配後、修正申告等によって追徴税額が生じた場合でも、会社はすべての財産を整理し終わって清算結了登記まで進んでいるので、税金を納付することはできません。しかし、会社が存在しなくても「第二次納税義務」という考え方により、関係者に支払い義務が生じるのです。
第二次納税義務は清算人と残余財産の分配を受けた者が負う
この第二次納税義務は、清算人と残余財産の分配を受けた者が負うことになります。オーナーが株を100%持つような中小企業の廃業の場合、清算人は代表取締役=オーナー社長であり、残余財産の分配も受ける者もオーナー社長であることが多いでしょう。
つまり、自分の会社を廃業した場合、残余財産が自分に返ってきたと思っていても、廃業した会社が滞納した税金は自分で払う必要があります。結局逃げられないのです。
なお、滞納した税金における支払の責任範囲については、分配された金額に依存します。
清算人は残余財産の分配時の価額、残余財産の分配を受けた者としては、分配を受けた財産の分配時の価額が責任範囲の上限です。
納税の期限を延長することはできるのか
滞納していた税金が多額の場合、すぐに払えない場合もあるかもしれません。実は、国に税金の納付期限を1年に延長してもらえる制度(納税の猶予制度)があります。
この納税の猶予を受けられると、滞納分の延滞税が全額または半額免除されます。この納税の猶予に関しては要件を満たす必要がありますが、廃業の場合は「納税者が災害を受けた、もしくは病気にかかった場合、または事業の休廃止をした等の事実がある場合」という要件に該当します。
税金を支払って債務超過になる場合は?
税金を支払って債務超過になってしまう場合はどうなるのでしょうか?
税金を支払うことにより債務超過になった場合であっても、外部債権者への返済をすべて終えた結果、オーナー社長が会社に貸付けした債権のみとできれば廃業は可能です。オーナー社長が当該債権を放棄すれば、資産・債務のバランスがゼロとなります。
しかし、債務がほかに残った場合は、廃業はできません。それは倒産になります。廃業とはあくまでも債務をきれいにした会社にしかできない行為です。
現実的には税金を滞納したうえでの私的整理は困難だと考えたほうがいいにゃん
廃業を考える際には、会社清算後に残る未納税金は納める義務があるということを念頭において、債権者にも迷惑をかけない円満廃業を目指しましょう。