廃業を決めた中小企業の経営者から、「どのように関係者に挨拶をすべきか?」という質問を時々受けることがあります。その際の文章や話の中で「謝罪感」がとても強いケースが時々あります。
廃業するのに謝罪は必要でしょうか。会社によって事情は異なりますが、必ずしも謝罪一辺倒である必要はないのではないでしょうか。
廃業する際に挨拶状で謝罪するかどうかは、主にビジネスの種類、顧客や取引先との関係、そして個人の選択によって異なりますが、以下の点を考慮すると良いでしょう:
ビジネスの種類と規模
小規模な個人事業主の場合、顧客との個人的な関係が深い場合が多いため、挨拶状での謝罪や感謝の表明が適切な場合があります。一方、一定以上の規模の場合は、形式的な通知がむしろ適切であることが多い印象です。
顧客との関係
長期にわたって継続的なビジネス関係を築いてきた顧客には、挨拶状での謝罪や感謝のメッセージを送ることが望ましい場合があります。これは、関係の維持と将来的な可能性を考慮した礼儀としても必要です。その中で、謝罪が必要であれば、難に対しての謝罪かを考えてみましょう。むしろ、謝罪よりも、お世話になったお礼の気持ちをしっかりと伝えたほうがよいのではないでしょうか。
事業の閉鎖理由
廃業の挨拶状で謝罪をするかどうかは、会社をたたむ理由によっても異なります。例えば、健康上の理由や家族の事情など、やむを得ない理由での廃業の場合は、こちらも顧客への感謝の意を表すことが多いです。しかし、経営上の問題などで急に閉業する場合は、謝罪の言葉を含めることが適切かもしれません。アフターサポートなどの引継ぎ先の準備や、廃業の意思決定から実際の廃業までの十分な時間を取ることで、取引先に迷惑をかけていないのであれば、謝罪よりもこれまでの感謝を伝えたほうが望ましい場合があります。
最終的には、個人の判断とビジネスの状況に基づいて決定することが重要です。挨拶状は、ビジネスの終わりを告げると同時に、これまでの関係に対する感謝や敬意を表す機会ととらえるのがよいのではないでしょうか。
廃業の挨拶文例
ここで、廃業の挨拶文例を見てみましょう。この廃業の挨拶分は、悲観的になりすぎず、関係者への感謝を伝えるもので、比較的ニュートラルなニュアンスとしています。とはいえ、「苦渋の選択とはなりましたが」という難しい判断だったという一文も入れています。
廃業のお知らせ
拝啓 酷暑の候、貴社益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は弊社〇〇製品に格別のご愛顧を賜り誠に有難く、厚く御礼申し上げます。さて、突然ではございますが、〇〇〇〇年の創業以来、〇〇年余に渡りご愛顧賜りました〇〇株式会社を、諸般の事情により令和〇年〇〇月〇〇日を持ちまして廃業致すこととなりました。
皆様の温かいご支援を頂きながら苦渋の選択とはなりましたが、廃業迄のお取引に関しましては別途連絡申し上げますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
これまでの永きに渡るご愛顧に心より深く感謝申し上げますと共に、皆様の今後益々のご健勝とご繁栄をお祈り申し上げます。
まずは略儀ながら書中を持ちまして、ご挨拶申し上げます。
敬具
挨拶は相手によって変えることも
廃業のお知らせは手紙やメールを使ったものもありますが、実際に足を運んで挨拶すると相手も理解を示しながら応じてくれるかもしれません。
広く向けた挨拶状に加えて、相手によって個別に挨拶するのはいかがでしょうか。相手によりますが、次の人生を趣味に生きるならどんな趣味をやるかなどを話すのも良いでしょう。ボランティアや、次の就職先の話も同様です。これをきっかけに、人生がまた別の形でつながっていくこともあります。
廃業もビジネス活動の一つです。ある程度割り切ってやることも必要です。その一方で、新しい人生のスタートでもあります。挨拶をしっかりしながら、次の人生へのつながりをここで作ってみてはどうでしょうか。