円満廃業できた?コロナ禍を経て、経営者が廃業を決断した企業の実態とは

「新型コロナウイルスの世界的な流行は、多くの企業に未曽有の危機をもたらしました。特に、中小企業や地域に根差した事業は、経済の急激な変化と長期化するパンデミックの影響を大きく受け、多くが廃業を余儀なくされました」

コロナ禍を経て、企業の廃業に関してこのような論調をよく目にします。しかし、廃業と一言で言っても、その背景や経過は企業ごとに異なります。経営者が廃業を決断したその背景はどのようなものだったのでしょうか。実際に廃業を経験した元経営者にアンケートをした調査結果が公表されました。

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「経営者の引退と廃業に関するアンケート」とは

この調査は2023年に日本政策金融公庫総合研究所によってインターネット調査を利用して行われた「経営者の引退と廃業に関するアンケート」です。事前調査で尋ねた廃業の理由(複数回答)の選択肢を「経営者の事情」と「事業継続困難」とし、その中で「経営者の事情」に一つでも回答している元経営者を調査対象としています。

つまり、売り上げの低迷や債務状況などの理由のみで廃業を決断したのではなく、経営者自身の事情によって廃業を決断したケースを調査の対象としています。この結果、外部要因で廃業したのではなく、自らの意思によって廃業を決断した人たちの実態を、この調査から読み取ることができます。

そもそも「誰かに継いでもらいたい」と思っていない

廃業の話が出るときに必ず出てくるワードは「事業承継」。会社をたたむのではなく、誰かについてもらおうと思わなかったのか? という疑問が外部からは出てきます。しかし、廃業を決断した当事者である経営者の方々のうち、実に95.9%もの人が「後継者を探すことなく事業をやめた」という状況でした。その理由は「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていなかった」が55.0%を占めています。

本調査では、廃業した企業のうち8割近くが創業社長でした。「自分が作った会社を、潮時をみて自主的に廃業した」というケースが一番多いように見えます。

円満廃業できた?コロナ禍を経て、経営者が廃業を決断した企業の実態とは

「誰かに継いでもらいたいと思っていなかった理由」では、創業社長が自分のスキル・ノウハウを最大限に使ってやっていたという現状がありそうで、そのような事業だからこそ他人に承継することが難しいと判断しているように見えます。

なお、経営していた企業の業種をみると、「専門・技術サービス業」が22.1%と最も多く、次いで「小売業」が11.4%、「情報通信業」が9.6%となっています。

事業の将来性がないという理由も2番目に多いにゃん

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引退廃業者の廃業時の年齢は上昇傾向

引退廃業した人の年齢はどれくらいが多かったのでしょうか。廃業した時期別にみてみましょう。20~23年廃業の会社では「60~69歳」が41.0%と最多。平均年齢は64.2歳で、15~19年廃業の58.8歳、10~14年廃業の57.9歳から上昇しています。後継者を探さず、自分でできる年齢まで頑張った結果なのでしょうか。

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コロナ禍はきっかけにはなったが理由ではない

1つ興味深い結果が出てきました。どうやら「廃業した理由はコロナ」ではないようです。本調査では、廃業した時期について「新型コロナウイルス感染症が流行して1年後以降」が57.6%、「同1年以内」が25.5%でした。実際に多くの経営者たちがコロナ後に廃業を決めているというデータが出ています。

しかし、アンケートでは会社をたたんだ理由は「コロナが原因ではない」といいます。コロナ後に廃業を決めた企業の86.2%はコロナ前から「自分の代で事業をやめるつもりだった」と回答しています。

コロナによって廃業の決断が早くなったと回答した経営者が4割ほどいるものの、もともと廃業は予定しており、コロナ禍になって「会社をたたむなら今」という判断をしたように思えます。

円満廃業できた?コロナ禍を経て、経営者が廃業を決断した企業の実態とは

コロナは廃業するタイミングにはなったとは思うにゃん。でも廃業の理由をコロナにしないところに矜持みたいなものを感じるにゃん

業績が良いときに「円満廃業」できたのか

廃業決定時の業況は「悪かった」「やや悪かった」を合わせて80.8%でした。業況は良くなった状態で廃業を決断した会社が多いといえるでしょう。将来性についても「縮小が予想された」「やめざるを得なかった」を合わせて73%が、事業の将来性を乏しいとみていたというデータが出ています。

では、倒産というところまで行ったのかというとそうではないようです。廃業時に「借入金は残っていない」割合は 84.9%、廃業が「円滑にできた」「どちらかといえば円滑にできた」は合わせて 95.2%で、多くが円滑に廃業している。業況が良くない中で、早めに決断できたということに見えます。

どうにもならなくなる前に円満に、円滑に廃業できたようで良かったにゃん

一人社長の会社で廃業が多い

本調査で回答を得た元経営者からは、廃業決定時の従業員数は「1人(経営者のみ)」が71.2%であることが分かりました。19 年の調査よりもその割合が高まっています。いま、事業承継について政府や企業がさかんにサポートしたりサービスを提供したりしています。ウェブサイトを介したマッチングも増えてきました。しかし、それが実際に成果に結びついているのは、規模が相対的に大きい企業なのかもしれません。

社長の力量に頼っている中小企業では、はやり社長が判断して円満な廃業を早めに進めるというのも一つの選択肢かもしれません。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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