廃業時の適切な税金対策の方法とは~役員退職金を考える

中小企業の経営者にとって、廃業は避けて通れない選択となる場面もあります。しかし、廃業を決断する際には単なる事業の終了以上のことを考慮する必要があります。特に、税金の面での対策が不十分であると、廃業後も大きな負担を背負い続けることとなります。

事業を開業したときはさまざまな手続きなどを行ったと思いますが、廃業時の同様です。しかし、そのような情報はなかなか調べても出てこないこともあります。

廃業をする際には、所得税や固定資産税、消費税など様々な税金が[1] 関係します。これらの税金を適切に処理しないと、後に多額の納税や過剰な税金の請求を受ける可能性があるのです。また、事業の売却や資産の処分に伴う税金の計算も欠かせません。

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会社に資産がある場合、どう清算してお金を残すか

そろそろ会社から引退したいが、後継者がいないといった声は、中小企業のオーナーからよく相談をいただきます。いままでの頑張りの結果、会社には資産が結構あることもよくあります。M&Aを検討してもよいが、なかなか買い手がつかないこともあるでしょう。むしろ、M&Aをせずに会社をたたんでしまったほうが社長個人に対する資産が残る場合もあります(主に社長が100%オーナーの場合です)。

当記事では、M&Aをせずに会社を清算して現金化したときの税金はどれぐらいかかるのか、を考えてみます。

M&Aと会社清算は課税方式も異なる

M&Aと会社清算の違いは、課税方式にも違いがあります(所得の区分が異なるため)。M&Aによって株式を手放すことで得られるキャピタルゲインはいわゆる分離課税といって、他の所得と合算ができません。つまり他の経費などで消し込むこともできません。完全に株式譲渡の対価に対して課税されます。一方、会社清算の場合は総合課税となり、さまざまなやり方があります。

会社清算の場合は、車や土地など、会社の資産をすべて売却し、借金を返済し、当初の出資額を差し引き、残った資産を分配することになります。

M&Aでも会社清算でも使える「役員退職金」

役員退職金は、役員が退職した際に支給する退職慰労金です。一般的な退職金と違い、退職金規程を作成する必要はありません。ただし、役員退職金の支給には、定款の規定か、株主総会の決議が必要ですが、あとから設定することができるものです。そして役員退職金は全額を損金に参入できるため、企業側にも節税対策としてのメリットがあります。

役員退職金の節税メリット

勤続年数に応じて非課税となる金額があります。20年以上勤務の場合、1年につき40万円までが非課税となります。さらに50%のみが課税対象となります。

役員退職金は分離課税のため、ほかの所得と合算して税金を計算する必要がありません。これによってほかの所得と合わせると税率が上がってしまうことを避けられます。

この役員退職金を積んで会社の資産を減らすことで、いわゆる残余財産が少なくなり、最終的に分配される金額に対する課税金額を減らすことにもなります。

つまり、社長がどのような名目でお金をもらうかをしっかり考えることで、税金が変わってくるのです。

役員退職金を利用したこのケースはかなりの節税ができるにゃ

会社清算の場合は資産処分での税金に注意

会社を清算する場合は、前述したように資産を換金しなくてはなりません。売却する資産によっては法人税がかかることがあります。固定資産を譲渡等した場合に生じた譲渡益は、所得金額の計算上益金に算入されるためです。含み益のある資産を持っている場合は気を付けましょう(とは言っても売却するしかないのですが)。

廃業を検討する早い段階で相談を

廃業時に税金対策ができていないことによる、想定外の支出は痛いものです。M&Aによる買い手が付き、売却手数料が安い場合で、かつ役員退職金の額を多めにもらえる場合は、M&Aのほうがいい場合もあります(その場合は、買い手側との交渉次第になり、そう簡単にはいかないかもしれません)。廃業の方向で決断した場合は、とにかく役員退職金のことを念頭においていきましょう。

税金を支払いすぎるリスクを回避するためには、専門家と相談しながら適切な税務対策を講じることが欠かせません。廃業を検討する前に、税金の面での対策をしっかりと行い、未来の自分と企業の安全を確保しましょう。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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