オーナー社長が廃業時に退職金をもらう方法

企業経営というビジネスのライフサイクルには始まりもあれば終わりもあります。特に厳しい経済状況や市場の変動が起こる中で、廃業は避けられない選択肢となる場合もあります。だからこそ、最後にどうやって「綺麗な終わり方」をするのか、特に退職金を確保するにはどうすればよいのか、事前の計画と知識が必要です。

廃業を決定した後、多くの人が抱く最大の疑問の一つは「私の努力と時間に対する報酬はどうなるのか?」です。この記事では、廃業時にオーナー社長が退職金を得るための手段を考えてみます。

目次

自社で積み立てた退職金

多くの企業は、小規模企業共済などで、社長である自分の退職金を積み立てているでしょう。廃業した時に返ってくるお金は、共済金(解約手当金)と呼ばれ、これが実質の退職金となります。

共済金の支払いは、法人が解散した場合や、病気、怪我の理由により、または65歳以上で役員を退任した場合、共済契約者が亡くなった場合など、支払いされるケースはいくつかあるにゃん

または一般の生命保険で代用しているケースもあるかもしれません。保険商品の中には退職金貯蓄に向いている法人保険があり、その退職金には、社員が在職中に亡くなった際に支払われる「死亡退職金」と、定年退職などの際に支払われる「生存退職金(勇退退職金)」の2種類があります。

法人保険に加入した場合は、死亡保険金を死亡退職金に充て、解約返戻金(もしくは満期返戻金)を生存退職金に充てることができます。これによって2種類の退職金を一度に準備することができるため、このような法人保険を利用する経営者もいます。

従業員向けには養老保険を利用するとよいにゃん

廃業時の残余財産の扱い

もしあなたがこれから廃業する会社のオーナー社長だったら、会社の残余財産を退職金に充てるという方法があります。

法人が廃業するときの残余財産は、主に2つの方法で処理することができます。一つ目は株主に配当する方法。もう一つは代表者へ退職金を払う方法です。

オーナーが社長一人の場合は、いずれの方法を取ったとしても社長に入ってくることになります。どちらを選ぶかは税金を考慮して決めるのが良いでしょう。

退職金でもらう?配当でもらう?

退職金は一般的に税率が低く設定されています。非課税ラインが高く、税率も低いのが退職金です。そのため、退職金でもらうほうが得だということはよく言われます。

しかし、残余財産が多く、結果として退職金が多くなることもあるでしょう。その場合は退職金ではなく、残余財産の株の配当としてもらったほうがいい場合があることに注意です。

キーワードは、「退職所得控除」・「1/2課税」」・「分離課税」です。

在職期間が長いほど退職所得控除が増え、退職金から控除額を引いた分の半分がさらに非課税となります。そして、もらった退職金は役員報酬とは別のロジックで納税することができます。

例えば、在職30年で廃業するとします。退職金を5000万円とします。

初めの20年まで:40万円×勤続年数(20年)=800万円
21~30年分:70万円×残りの勤続年数(10年)=700万円
合計して1,500万円 が退職所得控除額となります。

さらに、退職所得控除を引いた半額が非課税になるため、
(5000万円-1500万円)× 1/2 + 1500 = 3,250万円
で、3,250万円が非課税になるのです。

さらに退職金は分離課税といって、株式などの譲渡により所得が生じた場合のように、他の所得とは分離して税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式をとります。つまり、通常の役員報酬と合算されることがないため、役員報酬にかかる所得税率は上がりません。

配当でもらった場合は、単純に分離課税で納税することになり、そこに非課税枠はありません、非上場会社からの配当金は最大55%の総合課税となります。多くの場合は退職金としてもらったほうが良いですが、念のため税理士に確認することをお勧めします。

どこからが「高額すぎる退職金」なのか

退職金が市場の一般的な価格(公正妥当と認められる金額)よりも高すぎる場合は税務署から認められないことがあります。その「高すぎる退職金」は税金を計算するうえで経費にできず、後日税務署から法人税を課税される恐れがあります。高すぎるかどうかは一概に判断することが難しく、業種によっても異なります。税理士に相談してみましょう。

あとから法人税を課税されたら想定外の出費になって痛いにゃ

退職金は経営者自身で作る

経営者自身が退職金を確保する方法は一般のサラリーマンとは異なります。自分自身で計画を立て、手続きを踏む必要があります。退職金はただの「お金」ではありません。それはあなたがビジネスに費やした長い年月と努力、そしてリスクを取って挑戦した証でもあります。

リスクを冒して事業を始め、数年かけて成長させ、そしていざ廃業という状況になったとき、多くのオーナー社長は「自分自身にも何らかの報酬を」と考えます。ですが、これは簡単なことではありません。実際に退職金を確保するには、税務の知識から法的なアドバイス、そして精緻な計画が必要とされます。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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