飲食業の廃業における現実と課題

飲食業の廃業における現実と課題

飲食店はその事業運営のサイクルが短く、開店・閉店が多い業界と言われています。この記事では、飲食業の廃業・倒産状況やその課題、そして実際の廃業エピソードを紹介しながら、飲食業界での廃業の現状を見ていきます。

目次

飲食業界の倒産状況

2020年、新型コロナウイルスの影響で、多くの飲食店が売上減少に陥り、経営不振に陥りました。日本料理店、フレンチ、イタリアンなど、あらゆるジャンルの店舗が倒産に追い込まれ、名店と言われる飲食店も閉店を余儀なくされました。もともと、飲食店の廃業率は開業後1年で3割、2年で5割、5年で6割と言われ、中でも個人経営の飲食店では法人経営の飲食店と比較して廃業率が高くなっているというデータもあります。新型コロナウイルスの影響によって、観光地や商業地に立地する飲食店は、売上が激減し、倒産に至るケースが多い状況でした。現在は、その傾向は回復しつつありますが、生き残るのが難しい業界であることに変わりはありません。

飲食業界が抱える課題

飲食業界が抱える課題の一つ目は、原材料やエネルギー代の高騰です。生活者は値上げに敏感な一方、仕入れ値やその他経費はどんどん上がっていきます。「値上げしてしまうと客が離れてしまうのではないか」という心配から、値上げに踏み切れずにいる飲食店は非常に多いでしょう。

飲食業界が抱える課題の二つ目は、感染症対策による経費増加です。従業員のマスクや消毒用品、換気設備の導入など、感染症対策には多大なコストがかかります。また、感染症対策によって、席数の制限や営業時間の短縮が必要となったことも、売上減少につながっていました。

さらに、デリバリーやテイクアウトなどの需要の増加にも対応する必要があります。これは不足した売り上げを補うチャンスととらえることもできます。しかし、そのためには、専用のデリバリーシステムやアプリの導入、配送スタッフの採用などのコストがかかります。また、デリバリーには食材の品質管理や配送時間の管理など、新たな課題が生じ、飲食店の現場に混乱が生まれているケースもあります。

地域に愛された飲食店の廃業

多くの飲食店が廃業・倒産の危機に瀕しているなか、実際に倒産した店舗の中には、長年地域に愛された店舗も多く存在します。洋食店を営んでいた矢島さん(66歳、仮名)先代が1970年代に創業し、地元の人々に愛され続けてきた老舗でしたが、突如として廃業を決めました。

矢島さんが廃業した理由は、新型コロナウイルスの影響による客足の減少だけではありません。「新型コロナウイルスの影響はあくまでもきっかけであり、もともと抱えていた問題がこれを機に明るみになっただけです」と矢島さんは説明します。地元では名前が売れていたため、この店を継ぎたいという人は何人か来て話をしたようですが、結局継がせようという人はいませんでした。

「このお店は、お客様においしいと言ってもらえるような強い気持ちが必要です。そのために私たちは、多くのものを犠牲にしてきました。休みも取れない長時間労働です。店への強い想いを持った後継者を探すことはできませんでした」と矢島さんは振り返ります。

さらに、店舗の老朽化によるメンテナンス費用の増加があり、矢島さんは抜本的なメンテナンスをすることでコストがかさんでしまう前に廃業を決断しました。この店舗は、多くの地元の人々にとって、特別な思い出が詰まった場所であり、倒産の報には多くの人がショックを受けたといいます。

今後の飲食業界について

飲食業界が抱える問題は多岐にわたっていますが、政府や地域社会、生活者の協力が必要だという声もあります。政府は、飲食店を支援するために、融資制度の整備や給付金の支給、税制上の優遇措置の導入などの支援策を実施してきましたが、地域社会や消費者も、飲食店を支援することで、地域経済を活性化させることができます。

飲食業界自身も変わっていかなければならないでしょう。デリバリーなどのサービスの充実や、テイクアウト商品の開発など、新たなビジネスモデルの構築や、地域の特性や需要に合わせたサービスの提供や、オンラインでの販売なども考えられるかもしれません。

飲食業界が直面する問題は、新型コロナウイルスの影響がクローズアップされてきましたが、それだけが問題ではないのではないでしょうか。人口減少や外食市場の飽和など、様々な要因が重なり、業界全体が厳しい状況に直面しています。

しかし、飲食業界は、人々が集まり交流をする場として、また食文化を育む重要な存在として、これからも存在し続けることが求められるでしょう。

山本さん(70歳、仮名)の営むすし店は、地元の人々に愛され、ランチには多くの人々が訪れることで知られていました。しかし、地方で車でしか行けないという立地もあり、客足が激減し、売上が減少していました。

山本さんは、店内での食事をはじめ、テイクアウトやデリバリーなど、様々な販売手段を取り入れることで、売上の確保に努めました。また、SNSやWebサイトの活用などで、寿司のおいしさや豆知識、食べたくなるようなネタの写真投稿を地道に繰り返し、多くの人々から支援を受け、店舗を維持することができています。

このようなエピソードを聞くと、飲食業界には多くの困難があるものの、それを乗り越えようとする人々がいることが伺えます。

まとめ

飲食業界の倒産には、新型コロナウイルスの影響だけでなく、人口減少や外食市場の飽和など、さまざまな要因があります。業界全体が厳しい状況に直面していますが、政府や地域社会、消費者が協力することで、より良い未来を切り開くことも可能です。

飲食業界が活性化することで、地域経済が発展し、多くの人々に雇用を提供することができます。また、飲食店は食文化を育むことで、人々の健康にも貢献することができる、大切な産業なのです。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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