3つ目の会社でようやく成功したヘンリー・フォード

ヘンリー・フォードは、歴史上最も有名な起業家の一人です。彼は自動車という交通手段を一般的にし、米国の自動車産業を変えました。フォードの革新的な製造工程は、低コストで信頼性の高い自動車を生産し、同時に労働者の給料を高く保ち、忠誠を尽くさせることに成功したとされています。

そんなフォードでも2回の失敗を経験しています。フォード・モーター・カンパニーで成功したのは「3度目の正直」でした。

目次

一度目の挫折: デトロイト・オートモービル・カンパニーの失敗

フォードは、自動車の原型である四輪バイクを作ると、その改良に着手するために資金を必要としていました。しかし、当時(1800年代後半)ではまだ自動車産業の標準的なビジネスモデルは確立されていない時代。資金調達に苦労し、最終的にフォードは、デトロイトの実業家ウィリアム・H・マーフィーを説得して、自動車製造を開始しました。そこで設立されたのが、デトロイト・オートモービル・カンパニーです。

フォードは多くの人が使える完璧な自動車づくりを目指したものの、うまくいきません、マーフィーは出資者として資金回収を重視し、実際にできたのは高級路線の車です。まだ自動車がお金持ちのものだった時代ではそれが普通の選択だったのでしょう。フォードにとっては、高いだけで性能も特によくないこの車作りに限界を感じます。結局、ほんの少しの車を作っただけで、デトロイト・オートモービル・カンパニーは解散してしまいました。

二度目の挫折: ヘンリー・フォード・カンパニーでの失敗

このような挫折にもかかわらず、フォードは自分自身を再び立ち上がらせ、作った車でレースに出場するなど、前向きに取り組みます。彼は自分が作ろうとしている車が多くの消費者のニーズに応えられることに気づいていました。そこで近づいてきたのが、1社目で考え方が合わなかったあのマーフィーです。それでも資金援助をもらってヘンリー・フォード社が設立されました。

今度こそと臨んだヘンリー・フォード・カンパニーですが、またもや意見の対立が生まれます。その原因も前回と似ていました。「大衆路線か高級路線か」です。のちのT型フォードで実現する「誰もが買える車」をこの時からフォードは考えていました。しかし、マーフィーが目指したのは高級路線でした。

2人の溝は埋まらず、マーフィーはヘンリー・リーランドを迎えて高級路線を進みます。フォードは会社を去りました。これがフォードにとって2回目の失敗です。なお、このリーランドが作ったのが高級車「キャデラック」です。なお、リーランドとはその後、別の形で関わることになります。

フォード・モーター・カンパニーの創設

これらの失敗にもかかわらず、フォードは諦めずに前に進み続けました。マーフィー氏との2度目の別れから数年後、フォードは、自分と同じようにリスクを取る精神を持った石炭王、アレキサンダー・マルコムソンと出会い、フォード・モーター・カンパニーを設立しました。この時40歳です。マルコムソン氏はフォードに生産の全権を委ね、1904年にモデルAを発売しました。

その後、ヘンリー・フォードの自動車を大衆に普及させる夢を実現したのが、あのT型フォードです。生産コストを削減するために効率的な製造方法を模索してアセンブリーラインという革新的な生産システムを導入し、それによって大量生産を実現します。また設計もあえて簡単なものにしています。T型フォードの成功は、生産効率の向上と大衆のニーズに焦点を当てることの重要性を示しているといえるでしょう。

大衆路線をひたすら突き進んだヘンリー・フォードですが、キャデラックを作ったヘンリー・リーランドと再び接点が生まれます。リーランドはキャデラックを作ったヘンリー・フォード・カンパニーを退職、「リンカーン・モーター・カンパニー」を設立して、またもや高級車「リンカーン」をこの世に出します。

しかし、世の中は大衆路線。リンカーン・モーター・カンパニーは倒産の憂き目にあいます。その会社を買ったのが、なんとフォードです。大衆路線を突き進んだフォードが、のちに高級車を買い、いまや大事なラインナップとなっています。フォードの柔軟性が垣間見えるエピソードです。

信じる力と柔軟性

ヘンリー・フォードには、信じる力とやり遂げる胆力、そして柔軟性を持ち合わせていたように思えます。多くの人からの注目を浴びてきただけに、ヘンリー・フォードは数々の名言も残しています。その中から3つを紹介します。

「決断しないことは、ときとして間違った行動よりたちが悪い」

「自分で薪を割れ。そうすれば二重に温まる」

「あなたができると思えばできる。できないと思えばできない。どちらにしてもあなたが思ったことは正しい」

 エマニャン

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円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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