キャリアブレイクとして選んだ40代での廃業

「キャリアブレイク」という言葉を聞いたことはありますか?

キャリアブレイクとは、これまでの仕事を一時的に離れるキャリアの中断・お休み(= ブレイク)のこと。この時期に自分のこれからのキャリアを改めて考え、学び直しやスキルアップ、リフレッシュなどに充てるものです。キャリアブレイクは自分が進んできたキャリアを振り返ったり、いったんリセットしたりして、この先のキャリア人生を見つめなおす準備期間となります。

会社を経営する経営者の中でも、廃業を経てキャリアブレイクとしていったん休憩をはさんでから次へステップアップする人も昔から一定数いますが、いまより注目度が高まってきています。

目次

キャリアブレイクは前向きなもの

キャリアブレイクはただの無職ではなく。先を見据えたうえでの準備期間・充電期間です。実はヨーロッパなどでは、昔から人生の一定期間を仕事から離れることが珍しくありません。文化として認められており、決してネガティブなものとは捉えられていません。この先の人生をしっかりと見つめなおして準備するための前向きな期間なのです。

キャリアブレイクという言葉は、以下のような言葉とともに語られることが良くあります。キャリアブレイクに関連してよく語られるこれらのキーワードは、キャリアブレイクの概念の多様な側面やそれに関連するトレンドを反映しているといえるでしょう。あなたも考えたことのあるキーワードが含まれていませんか?

  • ワークライフバランス:仕事と私生活の健全なバランスを保つこと。
  • 自己啓発:新しいスキルの習得や趣味の追求など、自分自身を成長させる活動。
  • リチャージ・再充電:精神的、感情的、身体的なエネルギーを回復すること。
  • キャリアの再評価:自分の職業的目標やキャリアパスを再考するプロセス。
  • リモートワーク:場所にとらわれずに仕事をすることができる柔軟な働き方。
  • バーンアウト:職場のストレスや過労による疲弊感。いわゆる「燃え尽き」。
  • リカレント教育・リスキリング:新しい知識や技能を学ぶこと。
  • 自己実現:個人の潜在能力を最大限に引き出し、自分自身の目標を達成すること。
  • ミニマリズム:より単純で意味のあるライフスタイルを目指し、物質的な所有物や生活の複雑さを減らすこと。

上記のキーワードからも想像できるように、現代社会では、ワークライフバランスという言葉のもと、個人の幸福や健康を重視する動きが強まっています。長時間労働や過度なストレスから解放されるためにキャリアブレイクを取る人が増えています。

また自己実現の追求も大きなポイントです。この先、テクノロジーの進展で、なくなっていく仕事がたくさんあるといわれています。「どう遊ぶか」が大事だという人もいます。個人的な情熱や趣味、自己啓発に時間を費やすことに価値を見出す人は今後も増えていくでしょう。キャリアブレイクは「自分がキャリアの中で何を優先するか」を考えるよい機会です。そして、自分のキャリアパスを再考し、長期的なキャリア目標や夢を持つよいタイミングとなります。

キャリアブレイクが浸透し始めた理由は、その時代背景にあります「ジョブ型雇用」という言葉をよく聞くように、1つの会社に属すのではなく、自分の専門性を中心にキャリアを考えていくことが推奨されています。

また、人生100年時代を迎えて学び直しの考え方が広まったこともキャリアブレイクが広がった理由の一つです。

40代で会社を廃業、キャリアブレイクをした例

東京でPR支援会社を経営していた西崎倫子さん(43歳・仮名)は、事業を廃業してキャリアブレイクの期間を取っています。西崎さんの会社は事業も順調で、社員が10人ほどになった時期もあったといいます。廃業を考えたきっかけは、社員の独立でした。「優秀な社員がぽつぽつと辞めていったんです。彼らはみな独立してフリーランスとしてやりたいと。業務委託として付き合いを続けていますが、ミレニアル世代やZ世代の人たちは、仕事とプライベートのバランスを重視して、伝統的なキャリアパスにとらわれない傾向があるように思いました」と西崎さんは振り返ります。

西崎さんは一人で会社を立ち上げ、社員を採用したあとは、社員たちの生活を守ることに一生懸命だったといいます。一方で会社を立ち上げたときほど、いまの仕事に対する熱量がないことにも気付いたようです。「とにかく会社を存続させて従業員の雇用を守るためだけにやっている感じがあったんですよね。何のために会社経営をしているのかが、ちょっとわからなくなりました」(西崎さん)。

次第に社員は2人になり、その二人の再就職先を手配して西崎さんは廃業を決意しました。廃業の判断をするにはずいぶん時間がかかったといいます。

「私は、『会社はこうあるべき』・『社長はこうあるべき』という私が勝手に決めた価値観に従ってきました。もともと、子どものころはおりこうさんで、両親や先生の期待に応えるのが得意なほうでした。ところがある時、自分の健康、家族、趣味など、他の人生の側面が犠牲になっていることに気付きました。もう少し自分の気持ちを優先してもよいかなと思うようになったんです」と西崎さんは、自分の気持ちに向き合うようになった背景を話してくれました。

「自分の感性というか気持ちのために仕事を離れるなんて贅沢だなと思われるかもしれません。でも、私らしく働き、私らしい人生を創るのは自分しかいないと今は思えるんです。もちろん、関係者に迷惑をかけないような調整が必要ですが、廃業してキャリアブレイクもありかなと思うようになりました」(西崎さん)。

西崎さんは廃業後、半年間はじっくり自分と向き合い、現在はフリーランスとして仕事を受けながら、「あと1年は模索するつもり」だと話してくれました。

廃業からのキャリアブレイク

キャリアブレイクのために経営していた会社を廃業するというエピソードは、個人の重大な決断を伴います。このような決断を下す人々は、自分のライフスタイル、価値観、または長期的な目標に重きを置いています。

転職も当たり前に時代になりました。企業経営を一つの仕事と捉えれば、それをやめて(廃業)、キャリアブレイクを取ることもできます。

キャリアブレイクは履歴書で見ると、離職期間があるという点ではただ単に無職でいた期間と変わりません。もしキャリアブレイクを経て、会社に所属することになった場合は、キャリアブレイクを自分で前向きにとらえ、説明していくことが必要となるでしょう。

キャリアブレイクは単なる休息期間以上の意味を持ちます、それは自己発見の旅であり、人生の再評価の機会でもあるのです。廃業後の新たな人生のスタートとしてキャリアブレイクの期間を設けてみるのもよいのではないでしょうか。

「仕事を辞めて充電中」と言っている人の中には、しっかりとキャリアブレイクと捉えて準備している人も多いかもしれないにゃん

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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