中小企業の経営者にとって、自らの事業を続けるか、それとも手放すかという決断は、人生の中でも特に重大なものです。自分たちの業界に多くの新規参入事業者が入り、競争環境が激化したり、自社の製品・サービスが時代にそぐわなくなってきたりと、かつて順調だった時期に比べて困難な時期に入ることもあるでしょう。
そのようなとき、かつて乗り越えた壁を再び乗り越えるべく、企業変革にまい進することも一つの手です。しかし、一方で、無理に事業を継続することが本当に正しい選択であるかどうか、冷静に考えてみる視点も必要ではないでしょうか。企業の未来を左右するこの大きな決断に際して、正しい判断を下すための評価基準を考えてみましょう。
1. 財務状況の評価
最も基本的な評価基準は、企業の財務状況です。資金流動性、負債の状況、収益性など、財務諸表を詳細に分析してください。税理士などの専門家と一緒に考えるのもよいでしょう。
中小企業の場合は、PL(損益計算表)の数字からは読み取れないこともあります。財務諸表を見ながらも、経営者として理解している実態を掘り下げて、財務状況を考えてみましょう。
経費の扱いが、自分の役員報酬の低い設定が実態を見えにくくしたり、「家賃がかからない」と思っている自分の土地も、本来はもっと価値を埋めるものだったりするにゃん
例えば、赤字が続いているその理由を分析してみます。ある例では、原材料費の高騰が一因であることが分析で明らかになりました。原材料を変えるということも考えましたが、商品のもっとも大事な部分であり、替えがききません。買えたとした場合でも製造ラインの変更に大きなお金がかかります。代替の取引先を探してみましたが、大きくコストが下がることはありませんでした。このように、財務状況を正確に把握することで、継続の可能性を見極めることができます。
2. 市場の需要と競争状況
市場の需要が減少している、または競争が激化している場合、事業の継続が難しいことがあります。しかし、ニッチ市場を見つけることや、差別化戦略を実施することで、状況を打開できる可能性もあります。
需要が減少していることに関しては、肌では感じていてもなかなか抜本的な行動に移すふんぎりがつかないケースが多いようにみえるにゃん。データで見るのがよいにゃん
競争の激しい建設業界で苦戦していたある会社は、エコフレンドリーな建材への転換で市場の新たな需要を掴みました。イベントなどの設営に布を中心としたエコフレンドリーな素材を使い、SGDsを意識したプロモーションをしたのです。この結果、環境意識する大企業群を顧客にすることができ、従来の中小企業や個人とは異なる企業を顧客にすることができました。
3. 経営陣と従業員のモチベーション
経営陣や従業員のモチベーションも重要な評価基準です。継続的な努力が実を結ぶ見込みがあるかどうか、経営陣や従業員がそれを信じて取り組めるかどうかが、企業の未来を左右します。
従業員の士気やスキルレベル、人件費の状況も重要な評価基準となります。経営者自身の健康や家族の状況も考慮に入れたほうが良いでしょう。「この代で終わり」と思っているのか、「長く続く会社である」と思っているのか、経営陣や従業員の本音に触れてみることでモチベーションを知ることができます。
経営者自身の資質や経営への情熱、意欲も重要な考慮事項です。自身が経営者として適していると感じるか、または必要なスキルや資質を身につける意欲があるかどうかを問うべきです。
これらの評価基準は、自分に素直になり、従業員や家族と本音で会話しないと、形だけの評価に担ってしまうことに注意です。
4. 改善策の有効性・現実性
廃業を検討する前に、改善策があるかどうかを考えてみましょう。コスト削減、事業構造の見直し、新規事業への投資など、さまざまな選択肢があります。しかし、これらの改善策が現実的に実施可能で、かつ効果が見込めるかどうかを冷静に評価することが重要です。
一つの方法として、SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)を行うことで、自社の内部と外部の環境を理解し、その結果を基に戦略を立てることができます。
改善策に関しては、組織の再編成や新しい投資により、事業を続けることが可能かどうかを現実的に判断できるまで検討しましょう。気持ちだけではどうにもならないこともあります。
5. 個人の価値観と目標
最後に、企業を継続するか廃業するかの決断は、個人の価値観や目標にも大きく左右されます。事業を通じて何を成し遂げたいのか、どのような生活を送りたいのか、自分自身と向き合うことも重要です。
なお、これらの評価基準に照らし合わせて検討する際には、専門家やアドバイザーの意見を求めることも有用です。これには会計士、弁護士、業界のコンサルタントなどが含まれます。
継続か廃業かの決断は、多くの要素を考慮する必要があります。しかし、上記の評価基準を用いて、自社の状況を客観的に分析し、長期的な視点で考えることが、正しい決断を下すために必要ではないでしょうか。
とりあえずの対策ではなく、納得感をもって廃業または事業継続を選べるようにしていきましょう。