中小企業が会社をたたんで廃業する際に、必ず通るプロセスとして、解散・清算人選任登記があります。この際、会社の定款に清算人会を置く定めがあるかどうかの確認が行われます。同時に、会社の定款を添付書類として提出する必要があります。
しかし、会社の定款をいざ確認しようとしたときに見当たらない、といったこともあります。創業して20年以上が経ち、そもそも見たことがないという話も聞きます。そのような場合、定款を再発行する方法はあるのか?または新たな定款を作る必要があるのか?そしてその場合の手続きはどうなるのか、など、本記事では、定款を紛失した場合の対処法について考えます。
会社が設立から何年経っているか
定款は会社目的や組織、業務などについて基本的なルールを定めたもので、会社の憲法と呼ばれたりもしています。定款は法律(会社法第31条 定款の備置き及び閲覧等)によって本店及び支店に備え置くことが義務付けられており、会社の営業時間内に株主や債権者から閲覧等の請求があれば、これに応じなければならないようなものです。
その定款を紛失した場合、再入手するためには、自社が設立(定款を作ったとき)から何年経っているかを考えてみましょう。
「5年」「20年」「電子定款」がキーワードとなります。
会社設立後5年以内の場合は、設立登記を行った法務局に登記申請書の閲覧を申請することができます。法務局における保管期限が5年のため、設立から5年を過ぎていると法務局には定款はありません。そこで、「紙定款」の認証した公証役場に定款謄本の交付請求をするという手続きとなります。つまり「原始定款」の謄本(コピー)を入手して再発行を行うことになります。
しかし、ここでも保管期限の制約があり、定款の保存期間は、公証人法施行規則により原則20年と定められています。20年を超えている場合は、定款を再作成することになってしまいます。
※電子定款で認証を受けた場合は、電子認証制度のオンラインシステムで「同一情報の提供」を請求
法務局の申請はあくまでも「閲覧」
設立5年以内の場合は法務局に行くのが早いですが、この場合定款が発行されるのではなく、あくまでも以前提出した定款を閲覧するに過ぎないという点に注意が必要です。定款をコピーすることもできません。閲覧時にスマートフォンなどで撮影するのが精いっぱいです。一部の確認でなく、再作成ということであれば法務局ではなく、「紙定款」を認証した公証役場に行ってしまうのが早いかもしれません。
なお、会社設立時に手続きを司法書士などの専門家に依頼し、電子定款で認証を受けた場合は比較的スムーズに再入手できます。電子認証制度のオンラインシステムで「同一情報の提供」を請求(認証された電子文書又は確定日付が付与された電子文書の謄本を請求)することができます。
「司法書士にお願いしたかな?」と思う方もいるでしょう。自分昔のことかもしれません。実は税理士に企業回りを手続きしつつ、税理士に紹介された司法書士にお願いしているケースがよくあります。経営者から見ると司法書士とはそこまで付き合いがないというケースがあり、創業者本人も忘れているかもしれません。設立時にサポートを依頼した税理士に聞いてみるという方法もあります。
公証役場に保管されているのは原始定款のみ
公証役場に定款が保管されていて一安心…。というわけではありません。保管されているのは、原資定款と呼ばれる、会社を設立した時の定款です。株式会社を経営していると、時々の必要性から定款変更・変更登記手続きを経ている場合があるでしょう。この場合には、公証役場で変更後の定款を手に入れることはできず、その後の変更を株主総会の議事録などをもとに追っていくことになります。
定款の再発行・再入手の4つの方法
- 設立登記を行った法務局に登記申請書の閲覧を申請する(会社設立後5年以内の場合)
- 公証役場に定款謄本の交付請求をする(会社設立後20年以内の場合)
- 「同一情報の提供」の請求手続きをする(電子定款で認証を受けた場合)
- 定款を再作成する
定款を再作成するには
定款を再作成するにはまず定款そのものを用意する必要があります。現在は、いくつかの質問に答えるだけで定款を作ってもらえるサービスがあるので、それを利用してもよいでしょう。
まずは最新の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を入手し、登記事項を確認しましょう。そこで設立当初から定款内容に変更があったかどうかも分かります。変更があった場合は、過去の株主総会議事録等に書かれているはずです。確認してみましょう。そして、それらの内容を基に定款を再作成し、株主総会の承認を受けるという段取りを踏むことになります。
定款を作り直すのは手間がかかる
このように、定款を紛失した場合は再取得や再発行に手間がかかることがわかるでしょう。定款は冒頭でも述べたように、会社の大事な憲法に値するものです。デジタルでも紙でも両方で大切に保管しておくのもよいかもしれませんね。