中小企業の経営における最終手段として「廃業」があるのは間違いありませんが、ひとまずは「事業承継」を視野に入れることも大切です。
事業を承継できるような体制づくりをすることは、自社をリフレッシュするきっかけの1つとなります。別の誰かに後継者となっていただくことを意識すると、全く異なる見方ができ、これまであなたの力わざでこなしていた仕事も、誰でもできるように仕組化することで効率的に回すことができることもあります。また客観的な視点の意識は、これまであなたの好き嫌いといった個人感情による判断は取りのぞかれ、新しい風を吹かせるリーダーになることもできます。
自分自身のリーダーシップ再評価
まず、自分のリーダーシップを見つめ直してみてください。私たちは見栄から来る自己演出によって、自分自身に対する誤解を抱き、本当の自分を見ることを避けがちです。心を落ち着かせることが重要です。自分自身を深く知ることで、本当に達成したい目標が明確に見えてきます。これは自分のリーダーシップを向上させる鍵となります。この理解を効果的に活用し、それが組織全体に波及すれば、自社全体のパフォーマンス向上も可能となります。
さらに、自分に最適な業務内容や責任範囲を明確にすることが可能となります。自分だけではなく、従業員の本質を理解すれば、彼らが最も活躍できる役割を見つけ、与えていけば業務をより効率的に運営することができます。不当な評価に対する不満が従業員の間で頻繁に挙げられるため、適正な評価を行うことで、個々の従業員のモチベーションを高める可能性があります。
人間には必ず得意と不得意の領域がありますので、自分の不得意分野を得意な他の人に委ねることも一つの手段です。「適材適所」という考え方に基づき、不得意分野では社外の専門家のアドバイスを取り入れるなど、社内で全てを完結させることなく組織外とも協業を行うことで、より柔軟な判断が可能となります。
このような経営スタイルにより、従業員との信頼関係が深まり、働きやすい職場に変化していきます。
従業員が積極的に活動できる職場の成果は、業績にしばしば反映されます。自分自身と従業員のスキルを定期的に再評価することで、企業全体がリフレッシュし、新たな変化や課題にも柔軟に対応できる力を育てることができます。
「企業のビジョンが…」という表現をよく使いますが、そのままにしておけば人間は短期的な利益や売上に集中してしまう傾向があります。言葉として企業のビジョンを書き出していなくても、どんな経営者も心の中にビジョンを抱いています。しかし、短期的な欲望にとらわれていたり、見栄からくる自己演出に追われていると、そのビジョンにアクセスすることは難しいでしょう。
次世代に受け継がれる本物のビジョンを生み出し、共有することで、組織全体は新たな力を発揮できるようになるでしょう。
事業承継をテーマとした探求を通じて、リーダーシップ力が育成され、企業が良い方向へ進むことが可能となります。
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授の提唱する成功循環モデル
事業承継を考えるとき、その理由の一番に挙げられるのが「適切な後継者がいない」ことです。そもそも後継者がいなければ事業承継は成り立ちません。
適切な後継者がいない理由としては、後継候補者の知識や経験不足が挙げられるかもしれません。しかし、それ以上に「継ぎたいと思わない」と感じていることが大きな原因であることが考えられます。これは、業界の先行きの不安や立ちはだかる壁が大きすぎると感じるからかもしれません。このような状況に対して後継候補者が受け身になると、結果的に継ぎたくないという気持ちにつながることでしょう。
ダニエル・キムが提唱する組織の成功循環モデルが参考になります。諦めをなくすためには、まず関係の質から改善することが必要だとされています。悲観的な現実を先に見てしまう傾向がありますが、良好な関係が思考を変え、思考が行動を変え、行動が結果を変えるという「グッドサイクル」の重要性があります。
事業を承継したいという意志を持つ人を見つけるためには、良い組織環境が必要です。良い組織とは、関係の質が高い組織を指します。あなたが現在の会社を他人に渡すことを望むなら、まずはこの関係の質に注目することをお勧めします。
関係の質を改善するためには、ビジョンを掲げ、共感を得ながら、実際の日々の活動を共有することが必要です。これにより、新たな未来を創りたいと願う後継候補者が生まれることでしょう。