元社長が体験したアルバイト選びの苦戦

元社長が体験したアルバイト選びの苦戦

会社をたたんだ元経営者たち―。経済的に不自由はないものの、何かしたいという思いから、アルバイトを選択する人たちもいます。しかし、このアルバイト選びを間違えると、体力的にきついどころか、自己肯定感がさがるという例も。

本記事では、会社をたたんだあとに従事したアルバイトのエピソードを2つ紹介します。

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立ち仕事の辛さ

福島博久さん(62歳、仮名)は、自分が経営していた会社をたたんだあとに、何か新しいことを始めたいと考えていました。「昔からやりたかった喫茶店で働いてみようと思いました」と福島さん。自分の娘がコーヒーショップでアルバイトをしている姿を見かけ、楽しそうに働いているのを見て、自分でもできるかもしれないと軽く考えました。

福島さんは、経済的に余裕があるため、アルバイトによって多くのお金を稼ごうとしたわけではありません。そういう状況なので、のんびりできるだろうと考えていました。しかし、実際に始めてみると、思ったよりも大変でした。コーヒーチェーンでアルバイトを始めた福島さんは、立ち仕事が体力的にとても辛くて、半年で辞めてしまったのです。

福島さんが辛かった点は、「腰が痛い」「トイレに行きづらい」の2点でした。立ちっぱなしでの接客が長時間にわたった結果、福島さんの腰への負担が増し、腰痛に悩まされるようになりました。「60代の私には、数時間立ち続けるということがもう無理でした」と福島さん。この腰痛は後々、日常生活にまで影響を及ぼすようになってしまいました。

福島さんがアルバイトについて苦しんだ理由は、社長として椅子に座っている仕事から、ずっと立っている必要がある仕事になったことです。そのため、体力的にも精神的にもつらい状況になってしまいました。

このような体験を経て、福島さんは自分が好きな趣味に時間を費やすことにしました。福島さんは、過去に制作していた陶芸作品の制作に没頭し、新しい作品の制作にも挑戦しました。そして、自分が制作した陶芸作品をインターネットで販売することにしたのです。「正直いって全然売れていません。それでも座って好きなことに没頭できるという、今の状況に満足しています。娘がやっていたから自分もできるだろうという考えは間違っていました」と苦笑しながら福島さんは振り返ります。

自分の子ほどの年齢の正社員たち

65歳の平塚裕次郎さん(仮名)は、退職後の暇を持て余していたため、とある中堅企業の経理部門のアルバイトを始めました。「社長時代に経理を自分でやっていたことがあったため、できるだろうと考えていました。実際にそれ自体はできたのですが…」と平塚さんは説明します。

平塚さんが職場に入って苦労したのは、自分自身の経験が邪魔してしまったこと。指示されたことについつい「私はこうやってきた」と言ってしまう癖が出てしまいます。

ある日、上司から「今日は帳簿整理をお願いするね」と言われた平塚さんは、「自分が社長だった頃はそんなことはやらなかった」と思ってしまい、つい「でも、そんなことしなくてもいいのでは?」と口にしてしまいました。上司からは、冷静に「ここでは、私が指示した通りにやってください」と言われ、周りの社員たちからも「さすがにそれはダメだよ」という反応が返ってきました。

自分の子どもほどの年齢の社員から雑に指示されることが耐えられず、平塚さんはついつい何か言ってしまうのでした。「会社のためにと思っていても、毎回口答えされるようでは扱いにくいと思われてしまいますよね」と平塚さんは振り返ります。

経理の仕事には平塚さんの経験も活かせるところはあるものの、その経験が現状の仕事に直結しないことが多かったのも不幸でした。経理といえど、テクノロジーの進化によってやり方は変化します。それでも、周りの社員からは敬意を持たれていましたが、平塚さんは自分がいまどう思われているかが気になって仕方がありませんでした。

その後、平塚さんは、どんどん周りの目が気になって仕方がなくなり、不安感が常につきまとうようになってしまいました。また社長経験者として、周りから煙たがられて距離を置かれて迷惑を感じさせていることに対する申し訳なさも感じるようになります。一方で、自分の「正しさ」を手放せずに怒りやイライラが募っていくというストレスを感じるようになりました。

結局、平塚さんは数か月後には辞めてしまいましたが、アルバイトをすることで自分自身のプライドや自己肯定感を再確認することができました。子供たちからも「もう働かなくていいよ」と言われましたが、気持ちを切り替えるのに時間がかかりました。

アルバイトといえど吟味すべき

経営者が「お金はそれほど要らないから」という理由で、軽い気持ちでアルバイトに従事することには危険が付きまといます。自分のキャリアが生かせること、自分が本当にやりたいことを考えたうえで、健康維持を優先し、同時に過去の成功体験を手放すことなど考えていくと、自分にあったアルバイトが見つかり、引退後の生活が穏やかなものになるでしょう。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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