事業承継や廃業後の新キャリア:スキルアップとネットワーク作りの秘訣

今回は、中小企業の事業承継を終えた経営者の、その後のキャリアについてのお話です。

まず、大前提として、新しいキャリアの道を歩み成功させるには、自身のスキルアップとネットワークがとても大切です。心機一転、再スタートをするためにはやみくもに実行しても勝算はありません。年齢を重ねた方の場合だと、深夜まで働くことも体力的にむつかしいでしょう。量をこなして成功まで導くのにも限界があります。かといって、過去の経験にとらわれすぎてもうまくいきません。

どのようなキャリアを選ぶとしてもスキルアップやネットワークづくりについては自分の時間を投資することになるでしょう。事業承継や廃業後に上手くリスタートを切るためにも、自身のスキルアップや人脈、人との関係構築には時間をかけるようにしてください。

目次

自分自身のさらなるスキルアップへの投資

はじめに、スキルアップについてのお話をしていきます。事業承継や廃業後の新しいキャリアには、従来の経営者としてのスキルだけでなく、新しい分野における専門的な知識やスキルが必要になります。

具体的には、デジタルマーケティングやITの活用などがあります。こういった知識は、今後ますますIT化されていく世界の中で必須のスキルです。セミナーや書籍、オンラインコンテンツ、学べる場は拡大しているので、乗り遅れないように自分自身を磨き続けていきましょう。

事業承継や廃業後の具体的なスキルアップの方法としては、以下の3つがあります。

自己投資をする

ビジネス上で重要とされる「自己投資」は、自分の成長やスキル取得のための投資を指しています。セミナーや研修のほかにも、読書、コーチング、レッスンなど、学び方は多岐にわたります。

廃業後に投資をするのはためらいがあるかもしれません。しかしお金や時間をかければかけるほど、人は知識を身につけることができ、成長できます。この時大切なのは謙虚な姿勢でまじめに取り組むことではないでしょうか。

これまでの企業経営で培った経験からなる実績も大切ですが、新しいことを学ぶ際は、ゼロから、体系立てて学ぶことも大切です。

中小企業の元経営者の中には「現場主義で成功してきた」タイプの方もいます。「座学なんて時間の無駄だ」と思われることが多いですが、座学で学ぶからこそ、いざ、実践となった時の吸収が早まります。

あなたの可能性をつぶしてしまわないためにも、”初心者のつもり”で、1から真面目に取り組んでみてください。

プロジェクトに取り組む

自己投資をして、ある程度の知識やスキルを身につけた後は、覚えた知識を実践としてアウトプットしていきましょう。

人間、インプットだけでは「100%完璧に学んだ」とは言えません。できるようになってはじめて実績となりますので、具体的な課題に取り組んでみましょう。

プロジェクトの実践では、問題解決力の他プロジェクトマネジメント力など、そこでまた新しいスキルを身につけることができます。プロジェクトの実践には、自己管理能力や柔軟性も大切です。「経営者」ではなく「その前の自分」に戻って1から行動することで気付きを得ることもたくさんあると思います。

自分自身を評価する

スキルアップのためには、自分を適切に評価することも重要です。私たちは見栄や臆病という大きな影を引きずって、その影を本当の自分だと思いがちです。中小企業を経営していた時期は、なかなか厳しい意見をいわれることもなかったかもしれません。

強み、弱みを正面から見つめることによって、長けた能力、不足している能力を把握できます。また、自己評価が自分に必要なスキルを示してくれることもありますので、客観的に自分を見つめ直す時間をとってください。

自分と向き合うことによって、自分の長所をさらに伸ばし、短所を補うことができます。
「経営者」ではなくなったことで、会社ではなく自分自身に使える時間が増えるので、ぜひ、その時間を有効活用してください。

ネットワークづくり:コミュニティに参加する

事業承継や廃業後に新しい人生のリスタートを切るには、自分自身の成長のほか、人脈を広げ、関係構築を行っていくことも重要です。現代は、同じ目標を持っている仲間や勉強をしている人との出会いが容易にできる時代ですので、コミュニティなどを上手く活用することをおすすめします。

コミュニティに参加することで、同じ分野の専門家たちと交流することができ、新しい知識や情報を得ることができます。

情報の入手や共有

同じ分野の方々とのコミュニケーションは、マスメディアには取り上げられないような最新情報やトレンドを入手することにつながります。各分野の情報を入手すれば新しいアイデアにもつながるため、積極的に交流を図ってみてください。

自分自身の専門分野について情報を共有すれば、相互に成長することができます。会社を経営していたときの経験や情報が思わぬところで感謝されることもあるでしょう。謙虚な姿勢で情報の共有をすることで、コミュニティ内での信頼を得ることもできます。

新しい人脈の構築

新しい人脈をつくることによって、ビジネスパートナーやクライアントを見つけることもできます。これは、経営者の時にはなかなか時間がとれない部分でもありますので、自分の価値をアピールし、積極的に多くの人との関係を構築していきましょう。

新しい人脈を通じて、新しい仕事の機会を得ることもできます。自分自身が提供できる価値をアピールすることで、新しいビジネスチャンスが生まれることもあります。

プレッシャーと刺激

自分1人では思うように進まないことも、同じ目的を持つ仲間など切磋琢磨できる人が近くにいれば成功しやすくなります。心地よいプレッシャーや刺激を感じないままに進めると、思わぬところでつまずいてしまいます。

コミュニティに参加することで、自分自身を追い込むことができます。同じ分野の専門家たちと交流することで、自分自身のスキルや能力について客観的な評価を受けることができます。また、コミュニティのメンバーたちが、自分自身に対してプレッシャーや刺激を与えてくれることもあります。自分自身が成長するために必要なプッシュを得ることができるでしょう。

自分の成長を止めないためにも、同じ分野の専門家と交流も楽しんでいきましょう。

信頼関係の構築

コミュニティへの参加で新しい人脈をつくること、信頼関係を構築することは、新しいキャリアの成功の秘訣でもあります。同じ分野の専門家たちと交流することで、お互いの信頼感を醸成します。そこでできた仲間は、助け合いの気持ちを持ち合い、いつか強い味方になってくれることでしょう。

見切り発車に気を付けて

飲食店を経営していた下田信二さん(45歳・仮名)は、会社を廃業することに決め、新たなキャリアをスタートすることにしました。「軽い気持ちで始めた事業でした。なんとかなるだろうというとても考えで、情報収集もたいしてやらずに起業してしまったのです」と振り返ります。

失敗の原因は、自分ひとりでやろうとしたため情報不足の分からないことだらけで進めたことにありました。一人で試行錯誤を続けようとしましたが、心が折れても折れっぱなしの状態になっていたのです。

そこで下田さんは一度見切りをつけ、今度こそと思い、新しい分野でのスキルアップや人脈の構築を目指し、研修やセミナー、コミュニティに積極的に参加することにしました。

ところが、参加したコミュニティで自分自身をアピールすることができず、新たな人脈を作ることができません。「そもそもそういうことが苦手で会社員をやめたのに、何をやってるんだか」と下田さんは苦笑いです。研修やセミナーに参加しても、自分自身が求めるスキルアップにはつながらず、時間とお金を無駄にしてしまいました。結局、新たなビジネスチャンスを得ることができず、新たなキャリアをスタートすることができませんでした。

下田さんは「コミュニケーション能力も問題でしたが、自分自身に向き合うことをせずに動き出してしまったことが悪かったと思っています。起業したときと同じことをしてしまいました」を振り返ります。

下田さんはここで、考え方を改めました。自分が情報や仲間を得たりすることばかり考えず、自分に何が与えられるのだろうかと自分の強みを分析していったのです。

そして自分から情報を提供したり、困っている仲間を積極的に助けたりしようとしていった結果、仲間ができ、勉強も積極的にできるようになりました。こうして心強い仲間と立ち向かえることができ、新しいキャリアは軌道に乗り始めました。

自分自身の方向性を

経営者の事業承継、廃業を経て、新しい分野でも同じように活躍するには、勉強する気持ち、自己分析、コミュニケーション能力の開花が必要になります。

はじめは自分に足りないスキルや知識、人脈構築にチャレンジするべく、謙虚でまじめな気持ちで知識を身につけ、自分自身のさらなる成長をつかみとりましょう。また、今までの経験を振り返り、スキルアップやネットワーク作りの方向性を見定めていくことも必要となります。

社長を退き、新しい道を歩む今だからこそ、自分自身を今一度見つめ直して次のキャリアへと進んでみてはいかがでしょうか。

 エマニャン

円満廃業ドットコム 編集部のアバター

円満廃業ドットコム 編集部

会社経営において、終わり方に迷いを持たれる経営者は数多くいらっしゃいます。廃業にまつわる「何をすれば良い」「本当に廃業すべきか分からない」といった様々な不安をクリアにし、これまで努力されてきた経営者が晴れやかなネクストキャリアに進めるように後押しします。

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